今季臨む唯一のカップ戦である天皇杯の初戦を迎えた。会場は、フクダ電子アリーナ。相手は、同じ明治安田J2リーグに属する千葉だ。リーグ戦で最下位と苦しむ中、明るい材料を見つけたい試合と言える。前後が中3日の連戦。先発は、フレッシュな顔ぶれとなった。GK南、4バックに右から貫、大森、新里、茂木。中盤は、右に柴山、左に山崎。中央は栗本と大橋がダブルボランチを組み、三幸がトップ下。前線は、中野の1トップだ。南と大森は今季初の公式戦出場。控えにも今季出場がないGK若林、MF阿部が名を連ねた。
試合は、立ち上がりから、ショートパスをつなぐ攻撃スタイルで試合に臨んだ。ファーストチャンスは、7分。敵陣で三幸が得たFKを短くつないで左サイドを崩すと、柴山のクロスを中野がヘディングで合わせたが、ゴール左に外れた。しかし、ビルドアップがスムーズに機能しているとは言い難く、相手のプレッシャーを受けてボールを逃がすだけの時間が続いた。原崎監督は位置取りの遅さ、柴山は背後を狙う動きでのけん制の不足、大森はボールの持ち方で相手を欺く工夫の不足を指摘した。
15分には自陣でボールを奪われ、クロスからヘディングシュートを打たれてヒヤリとした。突破口を探す中、22分、自陣でのビルドアップから素早くロングパスを繰り出す変化で山崎が左から抜け出す場面があったが、相手の守備網を突破できたのは、この場面くらい。最終ラインから中盤にテンポよくボールが入らず、何度かサイドチェンジで揺さぶったが、敵陣に入れずにボールを失うことが多く、30分にはゴールポストに救われる危険な場面もあった。
原崎監督は、後半に入るタイミングで、山崎に代えて阿部を投入。阿部は中盤の右に入り、柴山が左へ移った。後半も相手にボールを持たれたが、柴山がドリブルでカウンターを仕掛けるなど攻撃は鋭さが出て、守備も前半より少し高い位置で構えられた。
すると51分、大森が相手の縦パスを前に出て潰し、左でボールを受けた柴山が前に運んで得意の左足でアーリークロス。抜け出しが武器の中野がスッと相手の背後を取って足を伸ばして触ったボールは、相手GKの逆を突いてゴールへ。3人の特長が生き、先制に成功した。
前半はリスクを背負い続ける状況でチャレンジが難しかったと振り返った大森は「良いプレーの積み重ねが得点につながる。みんなの特長がつながった良いゴールだったと思う」と笑顔を見せた。
得点は、勢いを与えてくれる。続けざまに左サイドから押し込み、55分には三幸が左からマイナスのクロスを送り、阿部がミドルシュート。60分には、右から左へ振って柴山がターンからミドルシュートを放った。その3分後には、右サイドから貫が中野との連係でペナルティエリア内に侵入する場面もあった。
千葉が4人同時交代をしてから自陣右サイドを押し込まれる場面が増えたが、原崎監督は、中盤の右に高柳、最終ラインに岡庭を投入してカバー。79分に最終ライン裏を急襲され、ポスト直撃シュートを打たれるなど危険な場面もあったが、終盤に投入された小島、アンジェロッティが攻守両面でハードワーク。形を問わず、泥臭く勝利をつかみ取る姿勢を貫徹した。
アディショナルタイムの目安5分を迎え、平日の夜に敵地まで足を運んだサポーターが「無敵大宮」を響かせる中、1-0のままタイムアップ。ベンチにいたメンバーは、すぐさま原崎監督を囲んで喜びの輪を作った。
新体制の初勝利で天皇杯初戦を突破。中野は「原崎さんが(なかなか勝てず)もがきながらも選手に寄り添いながらやってくれているので、勝利を届けられて嬉しかった。リーグで苦しい状況でいろいろな思いはあるけど、大会は違えども勝利は最高だなという瞬間だった」と振り返った。次戦は、明治安田J2第20節の藤枝戦。次は、リーグ戦における原崎監督体制での初白星を飾りたい。
(総評:
平野 貴也
)
選手・スタッフコメント
監督 原崎 政人
今日の一番の収穫は、次のステージに進めたことだと思っています。
なかなかチームが勝てていない中で、平日のナイターでアウェイにもかかわらず、ファン・サポーターの皆さんがこうして来てくれることに対して、選手たちは「なんとしても勝利を届けたい」という気持ちを非常に出してくれたと思います。
内容に関して満足はしていないですし、まだまだできると思っています。ただ、我々にとって一つ勝つことが非常に大きなウェイトを占めている中で、今日選手たちが表現してくれたことは、これからの我々が進むべき道を少し照らしてくれたと思っています。
なかなか勝てず選手たちが苦しんでいるのを僕は一番近くで見ていたので、どうしても勝たせたいという思いだけでした。勝てていない中でも日頃から非常によくやってくれていましたし、選手たちがやっと報われてホッとしました。
(南)雄太は毎朝1番にクラブハウスに来て体のケアをしていますし、トレーニングで手を抜いたところは見たことがなく、その姿勢はずっと見ていました。彼がチームに与える影響は、プレーの中でもそうですが、姿勢だったり発言もチームにとって大きい力になってくれています。
今日は無失点で終えることができましたが、守備のやり方であったり、自分たちがどういった守備をするのかという部分は、ゲームの中で表現できるようになってきています。まだまだ修正する部分もありますが、毎試合起こった課題に対して選手が向き合って改善していくこともスムーズにできていますし、その積み重ねが今日の勝利につながったと思っています。
FW 9 中野 誠也
リーグ戦で苦しんでいて、ファン・サポーターの皆さんの気持ちもわかっていましたし、天皇杯であっても今日チャンスをもらったメンバーで一丸となって、「何がなんでも勝ってやる」という気持ちを持って試合に入りました。自分のゴールでチームを勝利に導けたことは自信にもなりますし、チームにとっても大きいのかなと思っています。
前半は特にそうですが、自分たちがやりたいサッカーがなかなかできませんでした。ただ、絶対に最後はやらせないことであったり、皆がゴール前で体を張ることはできていたと思います。特に前半は無失点で終わらせることが大事だと感じていましたし、時には自分と三幸選手が戻って守備することも必要だと思っていました。もっと攻撃をしたかったですが、無失点で前半を終えられたことは良かったと思います。
得点シーンは、大森選手のカットから柴山選手が残して、自分はフリーでいたので、ゴール前に入っていくイメージでした。相手のDFが追いついていないのもわかっていましたし、柴山選手からすばらしいボールが来て、得意な形だったので体で押し込みました。
今日の試合は、なかなか出場機会が少なかったメンバーがチャンスをもらいましたが、そういった選手たちが奮起していなければいけないと思います。チームとしても流れを変えなければいけない中で、今日は綺麗な勝利ではなかったかもしれませんが、全員が体を張って戦って勝利できたことは、すごく大事だと思います。今日の勝利を意味あるものにするためにも次の試合が大事になってきますし、全員の力で週末の藤枝戦に必ず勝てるように、また明日から良い準備をして臨みたいです。
MF 31 阿部 来誠
前回メンバーに入ったときは結局試合に出場できずに終わってしまって、その後はメンバーに入ることもできなくなってしまいました。今日やっとメンバーに入ることができて、前回より「試合に出たい」という気持ちは強かったですし、チャンスがあると思っていたので、「絶対に何かやってやろう」という気持ちで試合に臨みました。
自分自身は、U18のときと比べると守備の強度も上がっていると思いますし、それも含めてやらなければ試合には出れない中で、今日はそういった部分でも貢献できたと思います。プロデビューすることができて良かったです。
チャンスの場面で(中野)誠也くんへのパスがズレてしまったので、イメージはできていたのですが、そこはもっとこだわってやっていかなくてはいけないと感じました。キックは自信を持っている中で、CKは割と良いボールが上がったのですが、その後のFKを失敗してしまいました。あの1本で印象が変わってくると思いますし、せっかくのチャンスを潰してしまうことはもったいないので、もっとやんないといけないなと思います。
原崎監督の初勝利に自分自身も貢献できた実感がありますし、次につなげていきたいです。
GK 35 南 雄太
自分の中では、リーグ戦に出場することと、NACKのピッチに立つことが一番の目標なので、まだ通過点ではありますが、一年前はここまで来ることを想像できなかったですし、時間はかかりましたが、ピッチに立てるレベルまで戻って来れて良かったです。チームがこういう状況の中で、無失点で勝利することができて、チームのためになったかなと思います。
今日は普段試合に出ていない選手が多かったですが、「自分たちでなんとかしたい」という気持ちがありました。苦しい試合でしたが、皆気持ちも入っていましたし、いまのうちの状況だとやっぱりこうやって泥臭く勝つしかないと思うので、それを体現できて良かったです。
ポストに助けられたり運もありましたが、それを引き寄せたのはやっぱり皆だと思いますし、何とか自分たちで流れを変えようという気持ちで皆が試合に臨んでいたので、一つ結果が出たことは良かったです。ただ、次のリーグ戦で勝たなければ今日の勝利も意味を持たなくなってしまいますし、次の藤枝戦が一番大事だと思いますので、そこで勝てるように、日数は少ないですが頑張ってやっていきたいです。
いくら良い試合をしても勝たなければダメですし、それが何よりも流れを変えると思うので、今日は内容云々よりも勝てたことが大事だと思います。プレー内容はまだまだですが、無失点で勝てたことがすべてだと思います。怪我する前の自分に早く戻れるように、日々努力するだけなので頑張ります。
Facts
Stadium | フクダ電子アリーナ |
|---|---|
Kickoff time | 2023年6月7日, 19時00分 |