鳥栖戦での今季初の敗戦をエネルギーに変えて、明治安田J2第6節で水戸を相手にしっかり完封勝ちを収めた大宮は、中2日でルヴァンカップ1回戦に臨んだ。
迎えたのは、4月末のリーグ戦でも対戦する難敵・いわき。対戦成績は2戦2敗。2年前のJ2リーグ、アウェイで逆転負けを喫し、ホームでも1-5で敗れた屈辱の記憶は消えていない。あのときの借りを返し、開幕から続いた連勝の流れを取り戻したい。
長澤監督は、鳥栖戦の翌日に行われた練習試合でも相模原に敗れた事実を「チームまるごとやられた」と受け止めている。その一方で、この3連戦は「チームが一丸となるチャンス」とも捉えており、全員で再び前へ進んでいくために、これまでと変わらぬ強度の高い練習を重ねてきた。
総合力が問われる一戦、システムは慣れ親しんだ3-4-2-1だった。先発のピッチに立ったのはGK加藤、最終ラインは村上、濱田、浦上の3人。両サイドは関口と安光。ピッチ中央で石川と和田がコンビを組み、前線にカプリーニ、谷内田、オリオラ・サンデーがポジションを取った。加藤、村上、和田は、ここまでリーグ戦での出場がなく、今季の公式戦初出場だ。
試合に飢えているフレッシュなメンバーは、立ち上がりから気持ちのこもった戦いを披露した。開始早々、キックの名手である島田裕介コーチが「最も可能性がある」と称賛する谷内田のFKのこぼれ球を安光が狙い、直後のカウンターは浦上が絶妙なカバーリングで食い止める。8分、ショートカウンターを受けドリブルシュートを許したが、ここは加藤が抜群の反応で弾き返した。
12分には、高い位置でのボール奪取からカプリーニが持ち込み、前を走るサンデーとワンツーを決めて左足を振る。ボールはわずかにゴールの右へ外れたが、あと一歩の決定機だった。
16分に先制されてからも攻守両面で積極性を失わず、守備陣は闘志溢れるプレーを見せる。3バックの中央で濱田がハイボールを弾き、村上と浦上が局面の戦いで優位に立つ。32分に村上が一発退場となり、残り時間を数的不利な状況で戦うことになっても、ゴールへ向かう姿勢は変わらない。
谷内田のシュートがクロスバーを叩いた直後の40分には石川のロングパスを前線で谷内田が収め、右のカプリーニへ展開する。深くえぐってからのクロスをサンデーが頭で捉え、強烈なヘディングシュートでスコアを振り出しに戻した。
濱田と浦上が中央を固め、関口と安光がサイドに回り、前線にサンデーが立つ4-4-1の格好でゲームを落ちつかせた前半は、ともに追加点のないまま1-1でハーフタイムとなった。
後半は、前へ出てくるいわきに対して耐える時間帯が続く。大宮は自陣でブロックを築き、サンデー、カプリーニ、谷内田のカウンターに懸ける。ただ、思うようにボールを運べない。サンデーが必死に手に入れたCKの場面も、谷内田のリターンを受けたカプリーニのクロスはシュートに結びつかなかった。
58分、ゴール前の混戦から再びリードを許して以降は、より苦しい展開に。さらなる失点を回避したい守備陣と1点が欲しい攻撃陣との距離が広がり、厚みのある攻撃を繰り出せない。リーグ開幕戦の怪我により戦列を離れていたファビアン・ゴンザレスがサンデーに代わってピッチに帰ってきてからも、我慢の構図のまま。相手CKからピンチを抜け出して、関口が長い距離をドリブルで運んでゴンザレスにつなぐが、いわきの厚い壁を崩すまでは至らなかった。
終盤は判定に対してフラストレーションを溜める場面が多くなり、なかなかゴールに迫れない。懸命にボールを運んでもチャンスは作れず、時間が過ぎていく。84分に富山と阿部も送り込んだ直後に、2人のお膳立てから和田がラストパスを送り、関口が放った左足のシュートは相手に防がれた。
それでも89分、ゴール裏を埋めたファン・サポーターの声援が鳴り響く中、安光のクロスに反応した浦上が頭でコースを変え、歓喜の同点ゴールを流し込んだ。アディショナルタイム、ゴンザレスが運び、石川が猛然と駆け上がってからの決定機はオフサイドとなったものの、逆転への期待を膨らませながら、試合は延長戦へ突入した。
スタッフを含め、全員で円陣を組んだ大宮は30分の死闘へ。99分、ゴンザレスの折り返しから富山が渾身のヘディングシュートを叩き込んだが、3分後にスローインのこぼれ球を押し込まれて3-3に。延長後半は攻守が激しく入れ替わり、お互いの勝利への執念が試されるような展開となった。
そして、両チームとも4点目を奪えずに迎えたPK戦。ホームの熱いファン・サポーター側のゴールで行われた一騎打ちは8人目までもつれる劇的な展開の中、2本を止めた加藤の活躍もあり、大宮の勝利で幕を閉じた。
試合後、長澤監督は「次に進むというミッションをクリアできてよかった」と冷静に語った。加藤は「ファン・サポーターの皆さんが後ろにいてくれて、本当に心強かったです。もう1、2本止められたと思いますが、味方がしっかり決めてくれましたし、やるべきことはできたかと思います」と言い、浦上は「今日は勝つことだけを考えていたので、2年前の悔しさとか邪念は捨てて試合に入りました。どこかで必ずチャンスはあると思っていたので、しっかりゴールを決められて、チームとして勝ち上がるところを達成できてよかったです」と振り返った。
激闘を制してルヴァンカップ2回戦に駒を進めた大宮は、より一層の団結力をもって、リーグ第7節の徳島戦に向かう。
(総評:粕川 哲男)
選手・スタッフコメント
監督 長澤 徹
平日のナイターにもかかわらず、5,000人近い人が集まってくれて、サポーターの方にはしっかり笑って帰っていただけるのでホッとしております。
カップ戦なので勝ち切って次に進むことがすべてなので、そういう意味ではしっかり次に進めてミッションはクリアできてよかったと思っています。ゲームの方はちょっと難しい状況になってしまったのですが、しっかりバランスを取りながらゲームを進めて、後半のアディショナルタイムで決め切れればよかったのですがそれを延ばしてしまって、ちょっと後ろまでいってしまったような形でした。ただ、明確に中ではリスクを冒すところとしっかりとバランス保つところとの息が合っていたので、なんとか勝ち筋を探しながらゲームを進められたと思います。難しいゲームだったのですが、選手がよく一つにまとまって、リスクのタイミングをしっかり見極めながらゲームを進められたと思っています。
カップ戦なのでまた次が大事なのでそれに向かうのと、次は日曜日にリーグ戦があるのでしっかりまた切り替えて次の準備に入りたいと思います。
GK 21 加藤 有輝
前半に失点して、そこから一人少なくなって、苦しい状況でしたけど、一人ひとりがチームのために戦うことができたからこその結果だと思います。
去年ルヴァンカップで悔しい思いをしたので、その経験を生かすというところだけ、本当に一つのボールに集中するだけだったので、特に意識したことはないですけど、試合にうまく入ることだったり、試合の前後、立ち上がり、終わり方は意識してやっていました。
基本的にシュートブロックはディフェンス陣がみんな体に当ててくれますし、DFがコースを切ってくれてGKとして守るコースを限定できたりするのは、今日というより普段の練習から積み上げてきたものがあると思います。3失点してしまいましたけど、ある程度のところはディフェンス陣が助けてくれた部分もあるかなと思います。
PK戦は前日の練習からいい感触はあったので、あとは自分を信じて思いっきり飛ぶだけでした。「ヒーローになれるチャンスだぞ」とみんなから優しい声をかけてもらったので、リラックスしてプレーすることができました。
勝っても負けても次が大事だと思うので、まずは週末の徳島とのリーグ戦の準備をして、チーム一丸となって戦っていけたらなと思います。
DF 5 浦上 仁騎
今日は試合に勝つことだけを考えていたので、余計なことや邪念をすべて取っ払って、試合に入りました。
10人になって厳しい状況で、時間帯的にも苦しかったですけど、結果を見て言えてるのかもしれないですけど不思議と負ける気はしなくて、自分自身もチームもどこかでチャンスは絶対何本もあると思っていました。その中で自分も一本をしっかり決めれたのは良かったかなと思います。
個人的にはリーグ戦にスタートから出ることがなかなかなくて、いろいろな思いを思っているだけではなくてピッチで出さないといけないので、そういうのを今日すべて出したいと思っていました。今日はリーグ戦ではなくてカップ戦なのでパフォーマンスどうこうというより勝ち上がったことがすべて評価につながると思うので、まずそこの勝ち上がるというところを達成できたのは良かったかなと思います。
崩されてやられるとかだったらまだ切り替えができますけど、今の僕たちの守備でビビってやられるとか、守れそうな守備でやられてしまうとか、体を張れるはずなのにやられるとかは、チームとしても個人としても許せない状況なので、だからこそ体を張ってそこを見てくれているのは一番うれしい評価だと思います。ただそこの質はもっと上げていければいいかなと思います。
今日PKで勝てたのは僕たちというよりかは間違いなくゴール裏で一緒に戦ってくれたファン・サポーターの方々のおかげだと思います。これからカップ戦もリーグ戦もまだまだ続きますけど、勝ってるときだけではなくて、負けてるとき、苦しい状況のときこそ、一緒に戦ってほしいなと思っています。
DF 44 福井 啓太
今日は本当に絶対出たいと思っていました。こんな試合展開になるとは思っていなかったですけど、そんな試合に出て勝てたのは持ってるのかなと思いますし、今後のリーグ戦でもデビューできるように頑張りたいと思います。
3点目のシーンは、前にファビアン(ゴンザレス)という良いターゲットがいたので、高いボールを出せばファビアンが勝ってくれてチャンスになるかなと思っていて、実際うまくいってよかったなと思います。
監督が求めている走ることだったり最後壁になるところだったりは今日出せたなと思いますし、右SBに入っても自分自身できるなという感覚はあったので、ネガティブな感じはなかったです。どこで出ても自分の良さというのは出して、チームに貢献したいなと思います。
大勢のサポーターの皆さんの前でプレーするという非日常のようなこの舞台でプレーしたいとずっと思っていました。ピッチの中に入ってみると皆さんの応援が本当に力に変わるなというのを実感したので、もっともっとサポーターの皆さんの前でプレーしたいなという気持ちがよりいっそう強くなりました。
Facts
主審 | 松澤 慶和 |
|---|---|
副審 | 大川 直也, 清水 拓 |
第4の審判員 | 原田 雅士 |
入場者数 | 4,850 |
湿度 | 20% |
ピッチ状態 | 全面良芝 |
気温 | 17.4°C |
天候 | 晴、弱風 |
Kickoff time | 2025年3月26日, 19時00分 |