クラブチームと高体連所属チームってどんな違いがあるの?

この時期、そろそろ進路の方向性を考える人もいるのではないでしょうか?「クラブチームと高体連所属チームってどんな違いがあるの?」と思う人も多いはず。そんな素朴な疑問に高体連出身の今村南海 選手(聖和学園高)&牧野美優 選手(十文字高)と、クラブチーム出身の久保真理子 選手(浦和レッズレディースユース)&西澤日菜乃 選手(ちふれASエルフェン埼玉マリ)が答えます! 


高体連チームはめいっぱい練習ができる!

今村南海(以下、今村) 高校は学校にグランドがあるので、朝練習をしてそのまま授業を受けて、放課後もそのまま練習に行くことができる…。いーっぱい練習できます!

久保真理子(以下、久保) それは良いことだ。移動がないんだもんね。

今村 でしょ?練習時間が確保できるのは良いことです。あと学校生活でもチームメートとほとんど一緒なので仲が深まる。

牧野美優(以下、牧野) 学校によって違うと思うけど、人数が多かったので協調性は生まれると思います。学校生活の中でも顧問や先輩が同じ校舎にいるわけで、ウチは礼儀を重んじる学校だったから、先輩が遠くにいても挨拶してました。

西澤日菜乃(以下、西澤) 遠めってどのくらいなの?

牧野 50メートルくらい先でも視界に入ったら、かな。

今村 確かに挨拶しない、制服をちゃんと着ない、準備をしない…、みたいなのは集められてめっちゃ怒られた。

久保 それは当たり前じゃない(笑)?

西澤 自分たちは準備とかは当番が決まってたな。基本的には下の世代がやるけど、上の人たちも気づいたことはやってくれてた。

牧野 そんな…、先輩が何か運んでたらヤバい!

久保 そうだよね。上の人が運んでるのに自分たちはやらないっていうのはない、っていうのが普通だけど、最近それが普通じゃないっていう世代ラインがない?

西澤 分かる! 当然のことだったのがなくなってる感じはする。自分らがユースのときはあったよね。

久保 あった。コミュニケーションを取ることは良いことだけど、その線引きができない子が増えてるんじゃないかな。VENTUSでも何回かあったよね、若い選手があまりにも何もやらなさ過ぎて…。

西澤 (杉澤)海星が言ったんだよね。

久保 そうそう。さすがにウチらの世代からだと圧があり過ぎて言えないから。…時代かな(笑)。





クラブチームは自由度が高め

久保 自分は中高でクラブユースでやってて、周りにレベルの高い選手がいたから、どちらかというとチームで強くなるというよりは個を高めていくことにフォーカスしていた気がします。チーム内でトップを走っているような選手じゃなかったからこそ、引っ張っていってもらうことで成長できたのは良いところかな。メンタル面でもみんなサッカーがうまくなりたいという強い思いを持っていたからこそ、メンタルも鍛えられた。あとエンブレムを背負うことがどれだけ大事なことで重いのかを教え込まれたから、クラブに所属することのプライドを持ってるよね。

西澤 クラブチームによって違うけど、自分がいたところは“チーム”が主体だったかも。高体連と違って年代で分かれてて、下から上がってくる子たちとも同じサッカースタイルをしているし、逆に自分たちもトップチームの練習に参加することもあるけど、そこでもスタイルが同じなのでギャップがないのは良いところ。あと上下関係はあるけど、そこまで厳しくないので、上の世代ともコミュニケーションを取れる関係性だったな。ここはチームによって変わってくると思いますね。

久保 高体連のチームとは練習試合とかで絡むくらいで、ほとんど対戦とかはなかったけど、大変そうだな…。ってずっと思ってた(苦笑)。

西澤 クラブチームは自由度があるかもね。でも性格的に合う、合わないあると思う。結局はクラブチームでも高体連でも、合わなきゃキツいもんね。自分はサッカーと学校がしっかりと分かれてる方がよかったから。



久保 それはある。高校のイメージは練習時間が長そう…。

今村 丸一日とか普通だよ?

牧野 朝は高校の練習をしてそのままそこに留まって、午後は大学の練習に参加することもザラだった。ウチは拘束時間は長いほうだったと思うけど。日が落ちる前に帰ったことはなかった気がする。

久保・西澤 絶対無理!!!

牧野 そういうのに揉まれることで鍛えられるの。

久保 高校チーム出身の選手はタフなイメージあるもんね。

牧野 打たれ強いとは思う。

西澤 磨き方は落とし込み方が全然違うよね。高体連はサッカーに勉強も組み合わさってるでしょ。自分らは区別できるからこそ、勉強がおろそかになる人も出てくることもある訳で。それでも赤点はめっちゃ怒られたけど。

久保 何点以上取らなきゃいけないっていうのはあった。チームよっては、成績悪かったら練習参加できないとか聞くしね。

今村 ウチは体育の先生が顧問だったから、授業態度とかよくなる(笑)。テスト期間中はサッカー部で集まって教え合いしてた。赤点取ったらグランドの走り30周が待ってたから。

久保 え?全員?

今村 いや、赤点だった人だけ。

久保 …それ自業自得じゃん。

牧野 テスト期間中は部活休みだったからしっかり勉強する感じ。だいたい成績のトップの方はサッカー部だった。

久保 すごっ!

今村 自分らもそうだった。あ、自分じゃないよ?サッカー部の他の人、ね。

西澤 南海じゃない人、ね。

今村 自分、一ケタ台だったよ?

西澤 え!! 何人中?

今村 20…何人か。

久保 …なんか思ってたのと違った(笑)。

牧野 ウチは文武両道だったんで、マジのヤツでした。





どんな環境でもシニアに上がれば見られるのは“個”

西澤 この世界狭いから、誰がどこでやってたか全部情報入ってくる。バックボーンが分かってから会うことがほとんどだし、高体連か、クラブかの違いっていうのより、どういうチームでやってたか、とかどういうプレーをするか、でしか見ない。見てる人もそうなんじゃないかな。

久保 あえて高体連とクラブチーム出身者の違いを挙げるとしたら、メンタルの強さの種類かな。全員が全員そうってことじゃなくて、例えば素走りのときに感じることがあって…、高体連出身の人は100を追求することができる。クラブチーム出身の人は、勝負の環境に長くいたからか、どこかで計算してる気がする。それが良いとか悪いとかじゃなくて。そういうのがプレーにも出て面白い(笑)。

西澤 いろんなところで目が光ってるところでやってきた高体連の選手は100%で向かうことに慣れてて、クラブチーム出身の選手は見せ方を知ってるから、落として良いところ、パワーをかけるところをうまく分けることに慣れてるとでもいうか…。

久保 まさにそれ! どっちの要素も選手としては絶対に必要だから、シニアチームになって、それが合わさるとお互いが吸収し合ってうまく馴染みあって、良いチームができるんだって今実感してます。

西澤 最終的には個性で勝負することになるんだけど、それプラス育まれる環境で違う強みも出てくる。どっちが良いっていうのはないから、自分に合った“チーム”に出会えるか、が大事なんだなって思う。学校生活とサッカーを分けたい人はクラブチームを選ぶと良いかも。

久保 涙のロッカールーム! っていう熱い青春を送りたかったら絶対高体連の方が良いと思う。良いよね、ああいう“青春”…。

今村 ほんと仲は良くなる。それを15歳とかで決めるの難しいとは思うけど。自分は自宅からの通いだったけど、寮生活してる人もいて、それはそれで楽しそうだったし、そういう経験を若いときにしておくっていうのは良いと思う。

牧野 ほぼ一緒にいるから、結びつきは強くなるよね。

久保 同期って友達って感じなの?自分はサバイバルだったから“ライバル”って感じだった。

牧野 友達っていうか…、人数が多くて練習ですでにA、B、Cに分かれてたからそのグループによって仲良くなることが多いかな。なんて呼ぶのが良いのか分からない関係性だな~。

今村 クラブチームって良いな~と思うことは、トップの人と練習できたりするでしょ?あれ良いよね。あとWEリーグとかの運営を手伝ったりするから、近くでプロのプレーや試合を見られるっていうのもすごいこと。高体連ではそういうのはないから。



西澤 たしかにトップの試合の前に前座試合とかスタジアムでやらせてもらえてた!

今村 えーいいなぁ。やっぱクラブチームは環境も良いんじゃない?ウチら土のグランドだったしね。

久保 でも、土でできるならどこでもできるっていう強みにもなるね。

今村 それもそうだね(笑)。結果、どんな環境でも強みは生まれてくるし、シニアのチームに入ればやってきたことが個性に加わるってことか。

全員 それ!




早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

FOLLOW US