個性豊かな「みのり鼎談」

戸梶有野里 選手、林みのり 選手、髙橋美紀 選手——。この3人の共通点は…、そう! 「みのり」です。年齢的にはベテラン(戸梶選手)、中堅(林選手)、若手(髙橋選手)とバラバラですが、絶妙な波長バランスでどんどん会話がつながっていきます。名前の由来から、ゴールデンウィークに開催される国立競技場での同日開催へ臨む思いなど、それぞれ率直に語ってくれました。時折爆笑が沸き起こる「みのり鼎談」のスタートです。


それぞれの「みのり」の由来

髙橋美紀(以下、髙橋) こんなに「みのり」が被るってなかなかないよね。名前の由来ってどんなです?

林みのり(以下、林) ウチは3姉妹なんだけど、一番上の姉と私は母が名前をつけた。姉が「ゆめの」って言うんだけど、私の名前とつながって「夢をみのらせる」という意味でつけたらしい。

戸梶有野里(以下、戸梶)・髙橋 お~!! ちゃんとしてる(笑)。

戸梶 ウチの親は今まで由来とかちゃんと教えてくれなかったんだけど、こないだ初めて教えてもらった(笑)。小学校の頃に聞いたときは「マンガから取ったかなぁ?」とか言われてたけど、最初は響きを気に入ったからだったそう。兄弟全員どっちかの親の名前の一文字が入ってて、「有野里」になったような気がするって言ってた。非常にザックリ(笑)。

髙橋 自分も母がずっと女の子が生まれたら音の響きがいいから「みのり」って名付けると決まってたんだって。10月の秋生まれなので「秋の実りのごとく、実り多い人生を送ってほしい」ということらしい。漢字は…、兄がいるんだけど、そこから「紀」の一文字もらって画数を調べてつけたら「美紀」になって、あまりスムーズに読んでもらえなくなっちゃった、みたいな(苦笑)。

 確かに珍しい読み方だよね。

髙橋 でもこのチームに来て、すごいつながりを発見した! みのりさん(林)って双子じゃないですか。高校サッカー時代に「みのりちゃん&かおるちゃん」っていう感じでこの2人がプレーしてたんだけど、ウチは母が「かおる」なんで、勝手に親近感倍増で応援してた!

 これ、すごくない?家族のうち2人、名前が被るって…。

髙橋 で! ですよ。西尾葉音のお母さんも「かおるちゃん」で、そのお母さんの妹さんが「みのりちゃん」。これ、どうよ(笑)!

 こうなるとトカさんのところにも実は「かおるちゃん」がいたり…?

戸梶 おらんよ! そんなうまくいくかいな(笑)。

髙橋 でもすごくない?これずっと言いたかったんだけど、今日のためにずっと我慢してた(笑)。




後半戦のWEリーグで感じる変化

 うーさん(齊藤夕眞)がすごく点を取ってくれたり、タカちゃん(髙橋)や葉音たち新加入のひとたちの存在がすごく大きかったり、そこの溶け込み方がよかったよね。だけど、「前半戦より良くなったね、でも惜しいね」っていうのが先にきちゃうから、そこを打破したい。

髙橋 分かる。そのためには失点したくない…、かな。

戸梶 つなげようという意識が生まれてきたから失点のリスクはあるんだけど…。でもクロス対応をもっと明確にできれば変わると思う。けっこうベンチで見てると「これやられそうやな」って感じるところでちゃんとやられてる気がする。今自分たちの時間だな、でもここで決め切らないとやられそうだな…、でやられる。

髙橋 後半戦が始まって7試合終わって、3勝2敗2分。AC長野パルセイロ・レディース戦に関しては勝点3が取れたもったいない試合だったなと今は思う。失点の部分も人はいるんだけど、最後のところで防ぎきれないのがあるから、そこは意識をちょっと変えないといけないのかなって。寄せてるつもりだけど寄せきれてないとか、マークついてるようでつけてないとか、自分も含めて意識を変えないといけない。でもみんなでどんどん人が湧き出ていこうとしてるのは良いことだと思う。

戸梶 絶対攻撃陣の変化が大きいよね。前半戦は守備の時間が多くてやっとクリアできたと思ってもなかなか前線でボールを収められなかった。前からハメてくれることで、周りが追い越していけるようになったし、相手陣地に入る時間は確実に増えた。

 前半戦は守ってくれたけど点が入らずに焦れてくることもあった。そこに点が入るようになったから、改めて今はやっぱり守備大事よねっていうターンになってる。体を張って我慢してる中で点が入るようになって、1点の重みをより感じるようになったよね。




夢の舞台・国立競技場で戦うこと

戸梶 INAC神戸レオネッサのときに国立競技場で試合やったんよ。あの1万人以上入った試合! あれ、前日練習も国立でやらせてもらったんやけど、もう最っ高! あれは上がる(笑)。

髙橋 国立はすごい人たちがプレーする場所、って感じだよね(笑)。

 五輪の決勝とか。

戸梶 あとあそこが満員になる高校サッカー決勝!

髙橋 W杯出場とか、優勝とか大きな何かがかかってる試合をやる場所のイメージがあるから、自分はいつそんなときが来るんだろうかって思ってた。

戸梶 やってくるよ、5月6日に(笑)。

 ロッカーとか楽しみかも。

戸梶 めっちゃきれいだった!

 国内最高峰の場だもんね。

戸梶 サッカーしてたら一度は立ってみたい場所でしょう!

髙橋 前日、寝れるかな(笑)。

 そこはちゃんと寝てね(笑)。でも陸上のトラックがあってすっごい大きいんだろうな。このチャンスにしっかり自分たちのサッカーの魅力を届けたいよね。

戸梶 VENTUSは今までゼロで抑えないと! っていう感じだったけど、点を取られても…、いや取られたらダメなんだけど(苦笑)、追いつける追い越せるサッカーになってきてると思うのでそこを見てほしい!

髙橋 女子サッカーは技術があるところがフォーカスされがちだけど、意外とバチバチやり合ってるところもあるよね。球際とかそういうのも注目してほしいなぁ。

戸梶 男子はその場のひらめき力で突破することも多い感じするけど、女子って積み重ねじゃない?何回も何回も同じプレーを試して、その先に実践がある。

髙橋 だから、それが成功したときは試合後とか「あれ良かったよね~」とかになるもんね!

 体に沁み込むまで練習する。だから連係プレーが出たときは、そういうのが裏にあるんだなって感じで見るとまた違う印象になるかもしれないね。


ジェフユナイテッド市原・千葉レディースとのしびれる一戦のポイントは“走り合い”

 前半戦の対戦ではホームで0-1で負けてる相手だから、今回は負けられない!

戸梶 千葉Lは走るチームだから、そこで負けない。走り合いの試合! …って、一番走らんヤツが言う(笑)。



林・髙橋 それ、思った~!!!

髙橋 GKのトカさんがそれを言うか?って一瞬納得いかなかったわ(笑)。

 でもイチ早く自己申告したから良しとしようよ(笑)。あと千葉Lには高さもあるよね。

髙橋 外国籍選手もいるし。

 セットプレーでも苦しめられた記憶がある。

髙橋 でも今ウチのCBは弾き返せるから。I神戸戦でも相手のトップを前で全部はじいてくれたし、ボールが収まる前に潰してくれてた。そこのほこたてのせめぎ合いは見どころじゃない?

戸梶 男子は上位対決! まずはVENTUSが勝って良い雰囲気で男子の試合につなげたいよね。

髙橋 今までも男子と同じ日にプレーすることはあって、男女がそろって勝つとSNSがすごく沸いてるのを感じてた。だから国立競技場での同日開催は男女どっちも勝って盛り上がりたい。男子は頂上決戦だし、私たちは一つでも順位を上げるために何が何でも勝点3が欲しい試合になるから、絶対に勝つ!

戸梶 男女で同日同会場での試合は初なので、プレッシャーも確かにある。でも個人的には男女で勝つってことが本当に大事だと思ってて…。ずっと勝ててない中でやったファン感のときに杉本(健勇)さんから「勝てなくて今は苦しいと思うけど、男子もそういう時期があった。本当に男子だけでなく女子も一緒に強くならないと意味がない。僕も応援しているので一緒にがんばりましょう! 」って言葉をもらって、本当に深く刺さった。だからこの国立競技場での試合は必ず一緒に勝利を手にしたい!

 リーグ戦の1試合ではあるけど、特別な日になると思う。とにかく本当に勝ちにいくことだけを考えてピッチに立つ。大宮アルディージャVENTUSとしてこのエンブレムを着けて国立で戦えるのは最初で最後なので、そこに責任と誇りを持って戦います。皆さん、一緒に勝利をつかみましょう!




早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。

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