今野浩喜の「タダのファン目線記」アライヘルメット訪問 前編

今野さんが「ただのファン目線」で行きたい場所に足を運び、会いたい人に会い、書きたいことを綴る本連載。今回は、NACK5スタジアム大宮の近くに本社を構える株式会社アライヘルメットさんを訪問。広報部の上幸一さんに、ヘルメット作りのこだわりや、会社の歴史などをうかがいました。前編では、本社内にあるショールームに飾られたヘルメットの数々を見ながら、ヘルメット作りにおけるいろいろなお話を聞きました。


今野さん、フルフェイスで登場も……

今野「今日、間違ってアライヘルメットさんの裏口から入ってしまいまして……」

「あ、そうなんですね」

今野「なにしろ、フルフェイスのヘルメットを被ってバイクで来たので、働かれている方々から『不審者がきた』と思われたかもしれません」

「アハハハ。そんなことはないと思いますよ(笑)」

今野「『アルディージャの企画で取材しにきまして…』と、近くにいらっしゃった方に言ったんですけど、おそらく伝わってなかった気がします」

「そうなんですか(笑)。ちなみに、アルディージャのホームゲームがある日は、この会社までサポーターの声が聞こえてきますよ」

今野「社内にアルディージャファンの方はいらっしゃるんですか?」

「サッカー好きは非常に多いので、いると思います。以前、僕もチケットをいただいてNACKに観に行かせていただいたこともあります」

今野「社内には、埼玉県内に住まれている方が多いんですか?」

「はい、市内に住んでいる人が多いですね」

開始直後、まさかの告白

今野「俺、実は昨年の10月末にバイクの免許を取ったので、まだ乗りはじめて1年経ってないんですよ」

「あ、そうなんですね」

今野「失礼な話、バイク自体にすごく興味があるわけではないんですけど、ものすごく勧めてくる人がいて。今でもヘルメットのこととかあまりよく分かってないんです」

「そうだったんですね(笑)」

今野「だから、ヘルメットを買うときも、どんなメーカーさんがあるとかなんにも知らない状態で買いまして。結果的に競合他社さんのものを買ってしまい……」

「いえいえ(笑)」

今野「のちのち調べると、『どうやら、アライさんのヘルメットのほうが被りやすそうだな』と思ったんですけど」

「ありがとうございます」

ヘルメット作りで重要視していること

(ショールームをぐるりと見る)

今野「ここにあるヘルメットは全部プロ仕様なんですか?」

「基本的には、弊社の製品のラインナップの中でトップグレードのものを並べています。実際に選手たちが使っているようなものですね」

今野「プロ用とそうでないものって、何が一番違うんですか?」

「ハイスピードのレースに適応できるクオリティや被り心地であることが一番大きいですかね。安全性能に関して言うと、ウチのヘルメットは、プロ用もそうでないものもさほど変わりません」

今野「むしろプロじゃない人が被るヘルメットこそ、安全性能が高いほうがいいですもんね」

「プロ選手であろうと、一般のライダーの方であろうと、わけへだてなく頭を守ろう、という方針で弊社はヘルメットを作っておりますので」

今野「でも、本当にヘルメットの被り心地を良くしようとすると、それってブカブカなんじゃないかなと思っていて。ある程度、キツめでないといけないじゃないですか」

「そうですね。ヘルメットは頭部全体に均一的に触れていたほうが、重くも感じず、1日被っていても疲れないので。そういう意味で、弊社のヘルメットは、“脱ぐ・被る”の楽さよりも、被ったあとのフィッティングを重視しています。被ったあとの頭全体を包み込むようなフィット感と言いますか」

今野「へえ~~~なるほど」

貴重なヘルメットの“中身”を拝見

「ここにあるヘルメットは、転倒して傷がついてしまったものが多いので、『助けてもらってありがとうございます』という意味で選手の方から送ってもらったものも多いんです。今後の製品作りの参考にさせていただくという意味でも、貴重なものです」

今野「触っても大丈夫ですか?」

「どうぞ!」

今野「すごい。傷がついたヘルメットって、こんなことになるんですね。中はどういう素材なんですか?」

「ガラス繊維を樹脂で固めたものです。これがその中身ですよ。触ってみてください」

今野「すごい。なんか、カサカサしているというか……」

「素材にもいろいろありますが、ウチの場合は基本的にガラス繊維を使っていますので、非常に丈夫ですよ」

今野「どのくらい頑丈なんですか?」

「ヘルメットにはいろいろな安全性能の規格があり、たとえば国内の『JIS規格』とか。海外だと厳しいものも多くて、ウチのヘルメットの主要ラインナップは、世界で最も厳しいと言われるアメリカの『スネル規格』をクリアしているんです」

今野「スネル……。なんとなく聞いたことがありますね」

次に今野さんがヘルメットを買うのはいつ?

今野「ヘルメットの寿命ってどれくらいなんですかね?」

「外側のガラス繊維に関しては、ある程度の衝撃が加わらない限りは、壊れることはありません。ただ、中身のスポンジなどは、使用頻度にもよりますが、劣化していってしまうので」

今野「へえ~~~」

「日本で売られているヘルメットって、『SGマーク』という規格がどれにもついていて……」

今野「ああ、これですか」

「これが、国が定めた規格に準じているという証なんです。そして、『ご購入から3年は保証期間ですよ』という目印でもあります」

今野「そうなんですね」

「つまりは、『3年ごとに買い替えてくださいね』という意味でもあると。ただ実際はメーカーさんによって材質も違うので、まちまちではあります」

今野「じゃあ、少なくともその期間はアライさんのヘルメットを買えないということか……」

「アハハハ。いつでも買っていただいて大丈夫ですよ」

カーボン素材の特長と誕生の背景

「ガラス繊維以外の特殊な素材ですと、後ろにあるようなカーボン素材(炭素繊維)のものもあります」

今野「これか。持ってみてもいいですか?」

「いいですよ。これは四輪用のカーボン素材のヘルメットですね」

今野「あんまり重さは変わらないかんじかな。カーボンだと、より規格の基準も厳しくなるんですか?」

「カーボンは一般的に軽いイメージがあると思いますが、より丈夫に作らなければならないので、より厳しいですね」

今野「これは地のカーボン柄ですか?」

「そうですね。カーボン柄にクリアコーティングを施している状態です」

今野「なるほど」

「今、国内のスーパーフォーミュラやスーパーGTなどのレースはカーボン素材のヘルメットを着用することがレギュレーションとして義務づけられているので、選手のみなさんはカーボンヘルメットを使われていますよ」

今野「へぇ~~~。そうなんだ。レギュレーションって変わるもんなんですね」

「F1マシンのボディにカーボン素材が使われるようになってから、ヘルメットもそうなっていきました」

今野「ヘルメットの中のスポンジの部分って、出して洗ったほうがいいんですか?」

「定期的にクリーニングしていただいたほうが、被り心地の良さはキープできますよ」

今野「どのくらいのペースで洗うんですか?」

「走っている回数にもよりますかね。毎日通勤時に被っている方は、せめて1カ月に1回は外して洗ったほうがいいですね。今は内装がすべて外せるヘルメットも多いので」

今野「インカムの線とか、全部お店の人につけてもらったので、外すの超怖いんですよね」

「アハハハ。なるべく線が絡まないような位置に通していただければ、そんなに難しいものではないので、今野さんにもできると思いますよ」

今野「インカムって、風の音とかで聞こえなかったりしないんですかね」

「今はインカムメーカーさんの力で性能も上がっているので、しっかり会話はできますよ」

マッチさんと先代社長の写真にビックリ?

今野「あ、これマッチさん(近藤真彦さん)ですよね?」

「そうです。マッチさんはスーパーフォーミュラという四輪のレースに参戦されているので。そこにあるサインも直筆ですよ」

今野「おお、すごい。これは…?」

「先代の社長の写真です」

今野「え、これどういうこと? バイクの上に立っているんですか?」

「そうみたいですね(笑)」

今野「これ、バイク自体は動いてないですよね?」

「たぶん、低速で動いているんじゃないかと…」

今野「ええっ!?すごい…」

「あとこれは、ウチのヘルメットを使っている選手たちのサインです。シーズンオフにご挨拶にきていただいて、サインをしていただきました」

今野「ほお、すごい」

「特にレース活動に関しては、70年代から一貫して取り組んでいるので、レース業界ではある程度、世界的に認知、評価されているのかなと思います」

今野「それだけ歴史があるんですね」

※後編に続く。

構成:田中 直希

協力:株式会社アライヘルメット
本社:〒330-0841 さいたま市大宮区東町2-12

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