今野浩喜の「タダのファン目線記」練習見学編

今野さんが「ただのファン目線」で行きたい場所に足を運び、会いたい人に会い、書きたいことを綴る本連載。今回は、トップチームの公開練習を見学。今野さんに感じたことや学んだことをうかがいました。


意外と難しい「練習の何を見るか」

——今日はよろしくお願いします!

「急に寒くなりましたね」

——トップチームの練習見学は何回目ですか?

「2回目です」

——いつ以来ですか?

「去年の夏以来……かなあ。そのときはめちゃくちゃ暑くて、すぐクラブハウス内に入ってしまいましたけど」

——上原レオナルド通訳に話を聞いたときですかね(2024年8月28日、9月25日配信)。

「たぶんそうです」

——ということは、外装の色などが変わってから初めて?

「ああ~~そうなんじゃないかなあ。ここの壁とかも変わってますね」

——せっかくなので正面の外観も見てみましょう。

「そうしますか」

——まだ選手たちはまだピッチに出てきていませんが、サポーターの方はすでに数名いらっしゃいますね。

「練習見学に来るたびに思うんですけど、『何を見るか』ってめっちゃ難しくないですか? 皆さん何に重きを置いて見られているんですかね」

——たしかに、意外と難しいかもしれません・・・

「経験者であれば何をやっているか見ればすぐ分かると思いますけど、そうでない方は何に注目してるんだろう」

——人それぞれなのでしょうね。

「ちなみに練習っていつもどれくらいの時間やるんですか?」

——だいたい2時間前後です。

「2時間もみんなずっと見てるんだ。すごい」

——練習公開日は、終わったあとに選手たちがファンサービスをするのですが、中にはそれをせずに帰られるサポーターの方もいらっしゃいますね。

「おお~~~それは本当に練習を見るのが好きなんだ」

“見られながらの筋トレ”は効果的?

——続々とサポーターの方が集まってきました。リーグ戦のホーム最終節の前なのもあって、今日はけっこう多くの方が来ていますね。

「ホントだ、多いな。でも、この人たちなんの仕事してるんだろう。平日の朝から見に来られるのってすごいですよね」

(選手たちが出てきて筋トレを始める)

——今日は筋トレからですね。

「えっ、外でやるんですね。なんでですか?」

——全員が同時にやるのでジムの中だけだとスペースの問題もあって、外でも少しやっていますね。

「(サポーターの方々に見守られながら黙々と筋トレをする様子をジっと見て)こんなに人に見られながらやるのって、逆にサボれないからいいのかもな。オレだったらイヤだけど(笑)」

——その観点はなかったです(笑)。

「でも、スポーツ選手だからこそ見られるのはあるのかもしれないですね。たとえば、演劇だと稽古前のストレッチをこれだけの人に見られるってことか……それは恥ずかしいなあ(笑)」

——あ、豊川雄太選手の髪色が銀色になってますね。

「ホントだ。気合いを入れるためかな」

——練習開始前に、全員で輪になって選手の誕生日を祝っています。

「(ハッピーバースデーの歌に合わせて一緒に拍手をする今野さん)」

——おめでたいですね。

「サポーターは一緒に歌うのかと思ったら、そういうわけではないのか」

最近のドローンのすごさ

——ピッチに出てきて最初のメニューは長めのダッシュからですね。さっそく、宮沢悠生監督が選手たちに大きな声をかけています。

「宮沢監督って選手経験はあるんですか?」

——プロ選手の経験はなく、びわこ成蹊スポーツ大学のサッカー部に所属しながら、スポーツ・マネジメントを専攻されていたそうです。

「そのときからもう指導者になることを見据えていたんですね」

——選手たちの体も温まってきたみたいです。

「すごい気になるんですけど、こういうダッシュとかの練習のときって、監督は選手の何を見てるんだろう。表情とかかなあ」

——表情や姿勢ですかね。あ、上空をドローンが飛んでいます。

「ホントだ。何を撮ってるんだろ」

——練習の様子を引きで撮っているのだと思われます。

「なるほど。にしても、ドローンってすごいですよね。空中であんなにビターって止まって」

——たしかに。

「でも最近のドローンってホントに静かになりましたよね。以前、ドラマの撮影でドローンを使ってたんですけど、すごい音がしてましたもん。もう……ヘリコプターくらいの爆音」

——そうなんですか?(笑)

「昔のドローンはそうでしたよ」

“全試合メモ”を確認しながら

——ボールを使った練習が始まりました。「鳥かご」と呼ばれるボール回しをしています。

「これはよく見ますよね。日本代表の『Team Cam』とかでもやってるのを見ます」

(ここで今野さんがスマホの“全試合メモ”を見始める)

——全試合つけてるんですね。すごいです。

「うん、全部書いてるんですよ。人に見せるために書いてないので、口が悪いところもありますが……」

——ファンやサポーターでもそこまで記録している方は少ないと思います。あ、前方にはフラッグを持ってきているサポーターの方がいますね。

「すごい熱心だ。でもあれ、ここに持ってきてどうするんだろ。どっかのタイミングで広げんのかな」

——もしかしたら、ファンサービスの際にサインをしてもらうのかもしれません。

「は~~~、なるほど。その可能性もあるのか」

——ピッチではまだ鳥かごが続いています。

「この練習、けっこう長いですね。でもこれって、回してるほうは楽しいけど、中の鬼役はあまりにボール取れないとだんだんイヤになってきますよね」

——それは分かる気がします。

「プロではないだろうけど、素人がやると輪がどんどんでっかくなっていったりしますからね。あれ、ズルいんだよなあ」

——鳥かごが終わり、2人1組になってロングボールを蹴り始めました。

「杉本は和田(拓也)と蹴っていますね。やっぱりこういうときって、自然と年齢が近い選手同士で組むもんなのかな」

——それはあるかもしれません。

「でもこれだけの人数がいたら、一人余ったりすることもあるよなあ」

——そういうときはスタッフと蹴ることもあります。

「でも今思ったんですけど、こんなに選手の数がいる中で、パッと見ただけで『誰がいる、誰がいない』っていうのが分かるの、すごいですよね」

——長く見られている記者の方は、ざっと見ただけですぐ分かったりしますね。

「すごい。こうやって外から見ていても全然分かんないなあ……。練習だと背番号があるわけじゃないし」

白熱のミニゲームを観察して

——次は、ゲーム形式の練習が始まりました。

「これは何やってるんですかね。ただのミニゲームですか?」

——いろいろな制限やルールを加えたミニゲームですね。

「一人ビブスが違うからあの人がフリーマンなのか。あと、あの黄色いポールがなんかの位置になってるんだろうな。面白いですね」

(ミニゲームの中で激しい空中戦のシーンが)

——すごい激しさです。

「ああいうヘディングの競り合いって、みんな何を考えながらやってんだろうな。頭同士でいくのって、それだけで怖いじゃないですか」

——たしかに。それにしても、だいぶサポーターの数が増えてきました。

「ホントだ、すごい。これはけっこう多いほうなんですか?」

——シーズンをとおして見ても、だいぶ多いほうです。

「今季の開幕戦で配られたポンチョをまだ着てる方がいますね。いいなあ」

(選手・スタッフが奥のコートに移動するため、一緒に移動)

——移動しましょう。

「これはなんのために移動したんですか?」

——芝の状態を保つためなど、管理上の問題だと思います。

「あ~~~なるほど、それもあるのか」

——見学に来られたサポーターの方々も一緒に歩いて移動するのが恒例です。

「(後ろを振り向いて)っていうか、もうすでにファンサービスのところに並んでいるサポーターの方々がいますね。もう練習は見ないのかな」

——これだけサポーターの方が多いので、ファンサービスを優先する人もいるのかと。

「たしかに、人が多いとそうなるのか」

最後のゲーム形式と、気になる個人練習

——別のミニゲーム形式の練習が始まりました。

「(宮沢監督の指示をアルトゥール・シルバやカプリーニ、ファビアン・ゴンザレスに伝える上原通訳を見て)スペイン語もいけるのかな」

——ポルトガル語と似ているので、話せるそうですよ。

「そうなんですね」

——ちなみに、宮沢監督は欧州での生活が長いため、ときどきドイツ語で指示を出してしまうこともあるそうです。

「あ~~~たしかに、試合後の会見とかを聞いてても、“外国人訛り”みたいな日本語になるときありますよね」

——監督が日本代表の右サイドの関係性を例に出しながら指示を出しています。

「(指示を聞きながら)これはめっちゃ分かりやすいですね。久保(建英)と菅原(由勢)だ。でも、カプリーニとか試合見てんのかな?(笑)」

——全体練習が終わりました。1時間半~2時間くらいでしたね。

「『これで終わります』って言ってないのに、どうやったら終わりって分かるんですか?」

——それはいろいろですが……用具を片づけ始めているところとかですかね。このあとは個人練習の時間です。

「もうあの外での筋トレはしないんですか? あれが気に入ったのでまた見たくて……」

——個人個人でストレッチや筋トレはするかと思いますが、おそらくもう最初のように外ではやらないと思います。

「そうなんだ」

——個人練習では、それぞれの色が見られます。豊川選手はシュート練習をしたり、小島幹敏選手はダッシュをしたり、CB陣はヘディングをしたり……。

「そういう感じなのか。カプリーニ、アルトゥール、ファビアンの外国籍選手3人が集まってますけど、あれはなんなのかな。PK……FKの練習?」

——なんでしょうかね。ちなみにその奥では、豊川選手らがシュート練習をしています。

「ホントだ。それに対して、カプリーニたちのほうはなかなか始まらないな(笑)。今どうやるか決めてんのかな。よく見たら小島も入ってるけど、何をするんだろう」

——蹴り始めました。FKの練習のようですね。

「こういう練習もするんだ。というか、だいぶ話し込んでいた割にはシンプルな練習だな」

——個人練習も終わりました。最初は不安の声もありましたが、ひさしぶりの練習見学を終えていかがですか。

「そうですね、思ったより(意図を持って)見れて良かったです。あと、練習の雰囲気もすごく良かったですね」

——シーズン終盤だから、ということではなくて、いつも練習の雰囲気はピリッと引き締まっています。

「へえ、そうなんだ」

——では、またぜひよろしくお願いします。

「楽しく見させてもらいました。J1昇格に期待しましょう」

構成:田中 直希

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