
今野さんが「ただのファン目線」で行きたい場所に足を運び、会いたい人に会い、書きたいことを綴る本連載。2025年最後の回は、インタビュー形式で今野さんにレッドブル体制1年目の2025シーズンを振り返ってもらいました。
思い出してビックリ?杉本選手のまさかの行動
——今季も主にDAZN観戦で、現地でも何試合か観た感じですか?
「現地観戦は、国立でやった(第14節・)千葉戦と開幕戦の2試合ですかね。最後(J1昇格プレーオフ準決勝の千葉戦)は、とんでもない負け方でしたね」
——……。
「姫野(誠)選手が出てきて、ワンプレー目からちょっと空気が変わりましたよね。本当に98年(フランス)W杯のジャマイカ戦、小野(伸二)選手が出てきて股抜きしたのを思い出しました。いきなり、なにやってんだろうっていう(笑)。なんで千葉は経験を積ませようとしてるんだって思いましたけど、やられました」
——はい。
「17歳ですか……ビックリしたなぁ」
——リーグ戦は最終的に6位でした。
「(ここからスマホに書いてあるメモを見てトークを展開)」
——いつも、どんな感じでメモしているんですか?
「見ながら書いてますよ。ただ、口が悪いので人に見せられるようなもんじゃない。(第37節・)徳島戦は1行だけ『リーグ戦終了』と書いてある。あとシーズン総評としては『PKが決まってたらJ1に上がれてた』と。それに尽きるかな」
——……いいところも振り返りましょうか。
「(笑)。いっぱいありましたよ、それは。『3、4年でJ1』と言ってたところで上位にいるもんだから、われわれが乗せちゃったところがありますよね。申し訳ない」
——う~ん……。
「良かった試合で言うと、まずは第3節・熊本戦。この試合はなにしろ交代で入った3人、関口選手、谷内田選手、カプリーニ選手が絡んで点を取りましたから。右サイドを関口選手が突破して、ニアで谷内田選手がつぶれて、カプリーニ選手がしっかり蹴り込む。(メモに)星印がついてます。この勝利で首位に立ちました」
——そうでした。
「第8節・大分戦の豊川選手のゴールもよかった。(映像を見ながら)これが、豊川選手の良さですよね。とにかく打つという姿勢が。普通は、なかなか打たない。第9節・秋田戦の村上選手は今季初先発で決めました。この試合、『終了直後の下口選手が熱過ぎる』と書いてあるんですけど、なにがあったんですかね。あぁ、叫んでますね。いいですね」
——村上選手の先制点のあとに追いつかれましたが、杉本選手が決めて2-1で勝っています。
「ほう。だから喜んでるんですね。(メモによると)第11節・札幌戦、58分のFKの場面で杉本選手がキッカーの位置に立ってたことに疑問を持ってるようです(笑)。『誰が引っかかるんだろう』と思ったのかな。それか、『ゴール前に行けばいいのに』と思ったのか。(映像を確認して)えっ!?札幌のFKの場面で杉本選手がボールの前に立ってるんだ。あっ、あったあった!それでだ。これは、いいシーンですね(笑)」

——なかなか見ない光景です。そんな感じで気になったことをメモしているんですね。
「86分、『札幌の選手が大宮ベンチにボールを蹴り込んだ』と書いてある。なのに、カードが出なかったようですね。ノートに、そう書いてないですか?俺のほうがちゃんとメモしてるっていう」
——すみません。
「藤井選手が、試合後のインタビューで泣いてたんですよね。ただ、俺にはどういう理由で泣いているのか、よく分かんなかった」
——開幕から3戦連発4得点と活躍して以降、ひさしぶりのゴールだったからですかね?
「第13節・富山戦。ファビアン・ゴンザレス選手が後半から出てきたのに、しっかりスルーしてカプリーニ選手のゴールを引き出したことを褒めてます。普通、途中出場なら結果を残したくて自分で打ちそうですけど、チームのためにプレーするところがすごい。ただ、この試合の前半はDIYしながらDAZN観戦してたようです。この時期、引っ越しの直後で大変だったんですよね(笑)」
解説・栗本さんに“言ってほしかったこと”
——その次が第14節、国立競技場での千葉戦ですね。
「これは良かったですよね。デザインした形でCKから豊川選手が先制点を決めましたね。だけど、現場の逆サイドから観てたので、なんにも分かりませんでした。71分、ハンドで取り消された千葉のゴールも、全然分かんなかった」
——続いて第15節・仙台戦は快勝でした。
「はい。あとは、雨なのに豊川選手の髪の毛が立ってることが気になったようです。雨にも負けない整髪料、なにを使ってるんだろうって」
——第19節、アウェイで長崎と3-3という試合もありました。
「この試合で津久井選手が(大宮)デビューしてるのか。『試合終了間際の市原選手がMVP』と書いてあるんですが……(映像を見て)なるほど。フアンマとの1対1の場面で足を出してシュートを止めたのか。これもすごい」
——長崎戦で折り返して、第20節・鳥栖戦(0△0)から後半戦となりました。
「……よからぬことばっか書いてます。第26節・愛媛戦でアルトゥール・シルバ選手が戻ってきましたね。やっぱり、ガブリエウ選手が戻れなかった以上、いる・いないで一番違いが出るのはこの人ですよね。ディフェンスがすごいし、持ち運ぶこともできる」
——頼りになります。
「第28節・札幌戦は『今シーズンワースト』と書いてあります。高嶺選手のFKか。試合の入り方はものすごく良かったのに、やっぱり、いい時間帯に点を取らないと負けることが多い。サッカーって、本当に不思議ですよね」
——第30節・今治戦で3連敗となって、宮沢悠生監督が就任しました。
「その前にスチュアート・ウェバーさんが来ました。知ってるチームで仕事してた人が来たと驚きましたね。監督交代して3連勝。すごいな。磐田、仙台、藤枝だから、相手が弱かったわけじゃない。(第33節・)藤枝戦はテレ玉で観てて解説が栗本広輝さんでした。笠原選手がケガして加藤選手と交代したので、そこでGKを経験した栗本さんに、なんで話を振らないのかなと思いました(笑)」
——2022年3月26日のJ2第6節・岡山戦、南雄太選手と上田智輝選手が続けてケガして、DFの栗本選手が急きょGKを務めた。あのときの話が聞きたかったんですか(笑)。
「期待しませんでした?めったにないチャンス。なかなかない試合中のGK交代で解説が栗本さんですからね。栗本さんも言いたかったんじゃないかな(笑)」
——第34節・山形戦が追いついての引分け。第35節・秋田戦が快勝でした。
「村上選手のすごいゴールだ。この時点で『2025年のベストゴール』と書いてある。ただ、ベストゴールとなるとゴールだけじゃなく背景も関係してきますからね。だから、そのあとの(第36節・)水戸戦の杉本選手の2ゴールのほうが、やっぱり印象に残る。あれはすごかったな。スタメンじゃなくなっても、どんな立場でも頑張ろうという覚悟が見えた気がします。特に1点目のヘディング!」
——最終節はアウェイの山口戦(2●3)でした。
「関口選手の、あの先制点もかなりすごかった。カプリーニ選手の、ものすごく長いスルーパスに走り込んで決めた、いいゴールでした。関口選手はどんどん良くなってた。昨年の振り返りのときも、関口選手に期待してましたもんね」
どこよりも早い「百年構想リーグ」予想
——今野さんが選ぶ今季のMVPは?
「結局、杉本選手は何点決めたんですか?6点。だけど、印象深い活躍をしてる。普通に考えたらアルトゥール・シルバ選手だと思いますけどね。いるといないとでチームが変わりますからね」
——最後、来季へ向けての期待を。
「百年構想リーグですよね。大宮、移動大変そうじゃないですか。なんでかな。どのチームも、いろいろと試すんじゃないですかね。だからといって、『キャンプの気持ちでやってほしい』とかは言いづらい。難しいですね。ただ、2026/27シーズンのJ1昇格を目標として明言しました。思ってた以上に大宮が強かった結果の上方修正だと思うので、期待したいですし、J1に上がってほしいです」
——はい。
「上がれなかったとき『3、4年って言ってたじゃん』と言われたら困ります。今後、当然選手の入れ替わりもあるだろうから、予想するのは難しいですね」
——百年構想リーグがどんな大会になるのか、すごく楽しみです。
「J2とJ3の40チームを4グループに分けて、まずリーグ戦をやって順位を決めて、同じ順位同士の4チームでトーナメントをやるわけですか。まずはグループの1位を目指す。すごい大会ですね」
——大宮は「EAST B」に組み分けられました。
「これの順位予想してる人いるのかな(笑)。かなり難しいですね。まずはグループの1位を予想して、さらにその後の4チームによるトーナメントの予想をする。1位から40位まで全部当てたらすごいけどな。Jリーグが10クラブから始まったのを考えると、本当に大きくなりましたね」
——そうですね。
「ここ(EAST A)の1位はどこだと思います?J1から落ちてきた2チーム、湘南と横浜FCがいるのか。このグループ厳しいじゃん。でも、やっぱり湘南かな。EAST Bの1位が大宮だとして、WEST Aを上がってくるのは新潟かな。WEST Bは、あれ、このグループはJ3が多くない?となると……鳥栖かな」
——予想してるんですね(笑)。
「だから、湘南、大宮、新潟、鳥栖じゃないですか。トーナメントの初戦がEAST対WESTのA対Bとするなら、大宮と鳥栖だから大宮が勝つ。湘南と新潟は湘南が勝って、決勝で長澤(徹)監督が率いる湘南と戦うってことか。あぁぁ~これはいいですね。ものすごく厳しいけど、面白そうです」
——最終戦は6月6日、7日のようです。
「今後、湘南に行く選手もいるのかなぁ。(長澤監督は)慕われてますからね。で、湘南と大宮が最後に戦って大宮が優勝すると。あとは、ここでトーナメントを勝ち上がるクセをつけておくのもいいかもしれない。実際、(2026/27シーズンのJ1昇格)プレーオフで大宮と湘南が戦う可能性もありますからね」
——そうですね。一発勝負に勝つ大変さは身に染みてます。
「はい。大宮が優勝と一応言っておきますけど、分からないです(笑)」
——お忙しいところ長い時間ありがとうございました。
「いえいえ、ありがとうございました」

構成:粕川 哲男


