明治安田J2・J3百年構想リーグの開幕が近づいてきた中、新加入選手の中から数人をピックアップして紹介。今回は、全国高校サッカー選手権で得点王に輝き、神村学園を初優勝に導いた日髙元選手のプレーと内面に迫ります。RB大宮アルディージャ加入を決めた高校世代屈指のストライカーは、どんな選手で、どんな道を歩んでここまで来たのか。クラブオフィシャルライターであり、高校サッカーの舞台で日髙選手を取材した平野貴也さんに綴ってもらいました。

多彩な7発で日本一の原動力に。野性味あふれるストライカー・日髙元の肖像
スピード・力強さ・献身性の三拍子
なんでも一番に。元(はじめ)という名前には、そんな願いが込められている。日髙元は、年末年始に行われた第104回全国高校サッカー選手権で得点王に輝き、神村学園の初優勝に貢献した。
決勝戦を含めて、通算7ゴールと存在感を示した。初戦の2回戦から右足ボレー、ハンマーヘッド、コントロールミドルのハットトリックで大暴れ。準々決勝のみ無得点だったが、国立競技場で行われた準決勝でダイビングヘッド、決勝で左足ミドルとバリエーション豊かなゴールでチームを勝利に導いた。
徒競走で負けた記憶がないと豪語するスピードが、最大の武器。身長165cmと小柄だが、跳躍や飛び込む動きから放つヘディングは鋭さを持つ。相手と競り合いながらでも前進できる力強さもある、野性味あふれるストライカーだ。
参考としてイメージすることが多いのは、日本代表の快足FW前田大然(セルティック)。「スピードもあってスプリント力も高い。そういう部分は、マネしていきたい」と憧れを持っている。実際に、日髙のプレーを見てみると、得点王となった今回の大会を見れば攻撃力が目立つが、相手GKまで追い込むプレッシングなど献身性も高い。
高校選手権で優勝した際、次のステージでどんなプレーをしていきたいかと聞くと「自分の長所を発揮して、その中で得点やアシストをしていきたい。献身性も大事にしていて、スピードを生かした守備も考えているし、(攻撃では)背後への抜け出しとかも考えています」と話した。速いだけでなく、繰り返して走れる。攻守にわたってアグレッシブ。いずれのプレーも遂行力の高さがにじみ出る。RBスタイルとの相性は良さそうだ。

飛躍のきっかけとなった高校でのコンバート
どうしても運動能力の高さが目立つタイプではあるが、能力だけに頼ってプレーしてきたわけではない。友だちに誘われ、幼稚園の年少で始めて以来、スポーツはサッカー一筋。宮崎県の出身だが、中等部から神村学園に入学。中・高の6年間を鹿児島県の名門校で過ごした。親元を離れた寮生活で自立心を磨きたかったことが、理由の一つだったという。
神村学園と言えば「ボールを見るな、相手を見ろ」の教えでポジショニングにこだわりを持つチーム。複数の仲間とかかわりながら、相手を攻略する攻撃サッカーに身を置いた。その中で、多くの経験を経て成長。中学時代はスピードを生かしたサイドアタッカーだったが、高校に入ると転機が訪れた。有村圭一郎監督から、FWへの転向を言い渡された。タッチラインを背にすれば、すべてを視野に収められるサイドとは異なり、最前線はゴールの近くで相手のマークは厳しく、360度の動きを察知しなければならない。当初は、コンバートに戸惑ったという。しかし、オフ・ザ・ボールでのポジショニング、駆け引きを学び、速くて推進力があるだけでなく、決定的な場面を生み出して点を奪う、相手にとって怖い存在へと進化を遂げた。

順風満帆ではなかった日本一までの道のり
その歩みも、順風満帆だったわけでもない。プロクラブからのオファーがなかなか届かなかったのには、理由がある。圧倒的な運動能力を誇り、高校2年生のころには主力扱いだったが、夏にひざを負傷。準優勝だったインターハイ(全国高等学校総合体育大会)は、出番がなかった。その後、復帰した試合で今度は左足を負傷。回復に時間がかかり、結局、約9カ月もの間、戦線離脱を余儀なくされた。仲間たちが全国大会で活躍したり、世代別日本代表に選ばれたり、プロ入りが決まったりと輝きを放つ中、一時は競技を辞めたい気持ちにもなったというが、家族の留意もあり、努力を続けた。
精神的な粘り強さを鍛えられた期間だったが、できることを探し、筋力トレーニングに注力。前を向いた状態でパスを呼び込むだけでなく、瞬間的に相手を背負い、重心の低いターンから前進するプレーもできるようになった。現在も休日などで暇さえあれば筋トレをしているという。
3年生の夏には、インターハイでチーム初の日本一に貢献した。苦しい時期を乗り越え、最終学年では夏・冬の全国2冠を達成。高校選手権では、得点王も獲得。最後には、たくさんの「一番」を手に入れた。
将来のビジョンについて、日髙はこう話した。
「日本からスタートして、海外にも挑戦したいと思っています。今、日本代表は、海外の(クラブの)選手が多い。日本人(のFW)も海外でやれるというのを上田綺世選手たちが見せてくれている。最終的には、やっぱりA代表とか入りたいと思っています」
自慢の足でさらに高いステージへと走り続け、より多くの一番を手に入れる。RB大宮アルディージャのエンブレムを胸に、日髙元のプロキャリアが幕を開ける。

平野 貴也(ひらの たかや)
大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。大宮アルディージャのオフィシャルライターは、2009年より務めている。


