前編では井上綾香 選手、乗松瑠華 選手が新規参入チームとして発足してからの月日を振り返ってくれました。後編はなかなかペースをつかめなかった2024-25シーズンを二人の目線から語ってもらいます。守備陣として、攻撃陣として、それぞれ思うことも多かったよう。教訓を得ての2025/26シーズンへの頼もしい意気込みと合わせてお楽しみください。
——2024-25シーズンは開幕から、とにかく勝利というものを切望する流れになってしまいました。ターニングポイントとなったのは?
井上綾香(以下、井上) やっぱりそれは中断期間明けだと思います。
乗松瑠華(以下、乗松) 明けてすぐの試合で点を取ったことじゃない?それでいける! ってみんなが思えました。中断期間中の練習試合はほとんど勝っていたので、それで公式戦どうなるかなってみんな思ってたから…。
井上 前半戦は大学やなでしこリーグとか下のカテゴリーとも練習試合をやっていたけど、勝てなかったんですよね。それがちゃんと勝てるところに戻った感じ。
乗松 そこからさらにいろんな形で点が取れて。こんなに練習試合で点が取れることが今までなかったから、これはいけるかもっていう期待感がありました。それで公式戦が再開して、デザインしてたセットプレーで取れたのは大きかった!
井上 しかも後半戦、セットプレーからの得点めっちゃ多くなかった?
乗松 取れるようになった!
井上 そういうのがちゃんと重なっていって、良いサッカーを見せられる試合が増えてきている実感はあったし、やっぱりホームで勝つのっていいですよね。見に来てくれる人も多いし、みんなで喜べるあの感じがいい!
——なかなか勝てない前半戦、一番苦しかったのは?
井上 個人的に言えば、まったく点が取れなかったこと。チャンスがなかったわけじゃなくて…。
乗松 最初のほうの試合でゴールが入らなかったからすごい雰囲気になっちゃったよね。だから余計にプレッシャーもかかってくる。むしろボールを動かせていた試合もあったし、アルビレックス新潟レディース戦とか、これだけボールを持てるんだって思える試合もあったんです。3バックにして、攻撃に人数かけられたりして、今までよりもボールを回せるようになったとは感じてた。だからそれで勝てないのが続くと…、気持ちでなんとか頑張れてたところが、踏ん張りがきかなくなってくるんです。1失点したらもうダメ、みたいな雰囲気になると、余計に失点しないようにしよう! ってなる。あれはいい緊張感じゃないですから。
——途中加入の齊藤夕眞 選手、髙橋美紀 選手、西尾葉音 選手はキャラクター的にもプレー的にもいい流れを生んでくれました。すぐに感覚はかみ合ったんですか?
井上 あまりうーさん(齊藤)とは練習でも組んではなかったんですけど。
乗松 あれじゃない?1月の練習がめっちゃキツかったから! 走りもあったし、パス&コントロールのメニューもキツいし、対人メニューもハードでもう必死だったから、それを一緒に乗り超えたことで一気に馴染んだかも。
井上 確かに。あとお互い知ってる選手だったことも良かったと思います。
乗松 それに彼女たちのグイっと懐に入り込める性格っていうのにも助けられましたよね。みんな勝てなくて、うまくいかな過ぎたからこそ、けっこうお互いに話せるようにもなってたのと、入ってきた選手も深く話せる選手たちだったから。
——個人的な数字のところでいくと、乗松選手はデュエルの勝率を上げたいと言っていました。
乗松 そうなんですけど、デュエルに持ち込むようなシーン自体があまりなかった気がします。インターセプトも少なくて…。ちょっとなんでそうなったのか、分からないんですけど(苦笑)。数字的にファイナルサードへのパスが増えたのは、足の速い選手が前にいるから、必然的に(増えた)。デュエルでも負けた感じはないんですけど、試合後に数値を見て、「なんで自分はこんなに数値が低いの?」って思うことも実際はあったので、そこにも原因があるのかもしれません。
——井上選手は…最終節で意地の連続2ゴールをマークしましたが、リーグ戦では3ゴール、カップ戦では1ゴールでした。悔しさが残りますね。
井上 チャンスがあっての、それなので。ちゃんと外したと言いますか…。前半戦の一発目のノジマステラ神奈川相模原戦では、多分3発くらい決められてたはず。ちゃんと吸い込まれていった…。
乗松 吸い込まれるっていうのは、普通ゴールの中に入ることを差すんだよ(笑)。なんで外に吸い込み口がある設定なの(爆笑)。
井上 だって、そうだった。あれで勝ってたら、前半戦はスタートダッシュ切れてたと思うんです。マジであそこから普段だったら入るゴールもちゃんと入らなくなった(苦笑)。
乗松 イノ、背負っちゃってたよね。
井上 ようやく終盤でゴールの感覚が戻ってきたから、まだシーズンを続けたかったっていうのが正直なところです。
乗松 自分も空中戦を練習して、前より攻めてると思うから、これをアベレージとしてもっと高めていきたいです。特に空中戦は全部勝ちたい! みんな今、セカンドの意識も高くなってきてるし、最初にいいところにボールを落とせるかどうかにかかってるから。
——お二人の話からも導き出せる2025/26シーズンの重要ポイントは…?
井上・乗松 ちふれASエルフェン埼玉との開幕戦(8月10日)です!!
井上 そして先制点!
乗松 それ、お願いしていいですか(笑)?
井上 …ま、任せろ(笑)。特に開幕戦で先に点を取られるとキツいから、頑張ります!
乗松 守備は流れに逆らわないで前からしっかりプレスをかけられたらいい展開に持っていけると思うんですよね。中盤が下がらないことと、セカンドボールを拾うことでボールの支配が決まると思う。後半戦の後半はほぼその勝負だった。ガツンといけないときはセカンドが拾えない。
井上 そうなるとすごく広大なスペースの中で、前線の自分らもキツくなるから。そこは回避したいです。
——苦しい中でも次につながる課題も拾いました。RB大宮アルディージャWOMENとして踏み出す新シーズンはどう戦いますか?
井上 10点!! …毎年、デジタルVAMOSで言ってる気がしますが(苦笑)。ここはブレずに掲げたいと思います。そしてゴールランキング3位以内を狙います!
乗松 守備としては失点数を10点台にしたいですね。上位3チームは失点が少ないイメージなので完封がベースで、大量失点する試合をなくしたい。基本あれ(大量失点)はメンタル崩れなので、そこを止める声が必要なんですけど、自分はどうしても失点に絡むポジションなので、それはそれでキツいんですよね(苦笑)。100%でなくても最終ラインはどこかしらで失点に絡むから。そうなるとFWから(井上をチラリ)の一言があると助かるんですけど?
井上 でも瑠華には言ってるでしょ! 点取ったあととか…、「点取ったあと大事だから」って。
乗松 「瑠華、瑠華、瑠華! 」ってめっちゃ言ってくるんですよ。個人じゃなくて、みんなに言ってよ(笑)。
井上 取り合えず瑠華に言っとけば、後ろは瑠華が締めるじゃん。自分の声は通りにくいし、とりあえず瑠華が「わーい! 」って喜んでるときに「瑠華、瑠華、瑠華! 」って言っとくの(笑)。
乗松 なんだそれ(笑)。そういうアクションをイノみたいなタイプがやると、それがまたいい影響につながるんだよ。
井上 なるほど、それもあるか…。やってみる?
乗松 ぜひ! どんどん出していって、いい雰囲気を作っていこう!
10代前半で出会い、WEリーグの舞台でチームメートとなった二人も30代のシーズンを迎えます。大宮歴からしても経験値からしても、中堅以上の役割を担っていこうとしています。RB大宮アルディージャWOMENを牽引する二人の活躍にぜひ期待してください。
早草 紀子(はやくさ のりこ)
兵庫県神戸市生まれ。東京工芸短大写真技術科卒業。1993年よりフリーランスとしてサッカー専門誌などへ寄稿する。女子サッカー報道の先駆者であり、2005年から大宮アルディージャのオフィシャルカメラマンを務める。