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【9月9日 トレーニングレポート】どんなときも笑顔でチャンスを待ち続ける志村滉のおもいとは
今季ここまで、試合出場はない。ただし、志村滉に悲壮感はない。
プロ11年目の29歳。市立船橋高校を卒業後、磐田、水戸、FC東京、北九州でキャリアを積み上げ、大宮在籍は4年目になる。好きな言葉は「一日百笑」。積極的に笑うことでストレスをなくし、前向きな気持ちになり、周囲との関係も良くなるという意味の四字熟語を地で行く、笑顔が似合う男だ。

明るいキャラクターについては、大宮加入直後に「子どものころからふざけたり、人を笑わせたりするのが好きでした。高校1年生のときに先輩の前で一発芸をやって、そのときはクスッて感じだったんですけど、そこでキャラが決まりましたね」と、自身の起源を教えてくれた。
試合後にファン・サポーターと勝利の喜びを分かち合う、恒例の「寝ても大宮」では、これまで何度も歓喜のダンスを披露してきた。J3優勝を遂げた昨季の第33節・今治戦後のセレモニーでは、シャーレを3度掲げ、3度とも仲間の反応がなくてずっこけるという、お約束のパフォーマンスで笑いを誘った。「3回は、ちょっと多かったですよね。でも、やれって言うから」
チームのみんなから愛されるムードメーカーだ。 とはいえ、サッカー選手としてのここ数年の歩みは、決して満足いくものではない。
北九州から期限付き移籍で大宮に加入した2022年は、リーグ戦26試合に出場した。第15節の岩手戦、南雄太の負傷退場を受けて急遽ピッチに立って以降、霜田正浩監督、バトンを継いだ相馬直樹監督からも信頼されて、最終節まで出場。勝点を伸ばせず、最終的に19位でシーズンを終えた1年で、7つの勝利と4つのクリーンシートに貢献した。
しかし、2022年の記録がキャリアハイだ。翌年は原崎政人体制で迎えた終盤の6試合に出場し、徳島、大分、山口、藤枝相手の4連勝を支えるなどしたが、J3降格を止められなかった。
そしてここ2年は、フルタイム出場を続ける笠原の牙城を崩せていない。
振り返れば、プロサッカー人生は試練の連続だった。
プロ1年目の磐田ではカミンスキーが不動の地位を確立しており、八田直樹もいた。2018年、育成型期限付き移籍で1年間在籍した水戸には本間幸司や松井謙弥、2020年のFC東京には林彰洋や波多野豪、2021、2022年の北九州には吉丸絢梓、田中悠也、さらには現在も大宮で鎬を削る加藤有輝などがおり、レギュラーを巡る争いは、どのチームでも熾烈だった。
そもそもGKは、たった一つのポジションを奪い合う過酷な環境におり、出場へつながる門はフィールドプレーヤーのそれよりもはるかに狭い。試合中の交代もアクシデントによるものがほとんどで、リードを守るためや流れを変えるための途中出場は、めったにない。
「GKがフィールドよりも枠が少ない特殊なポジションだっていうことは、十分わかってます。だけど、自分にできること、やるべきことは変わらないんですよ。大事なのは目の前の練習を全力でやることだし、やり続ければチャンスが来たりする。それを見越していつでも準備しているので、2年前は終盤にポンと出番が回ってきたときに結果を残すことができました。自分ではそういった状況に強いと思ってるので、試合に出るチャンスが来たときは、勝ちます!」

第29節の長崎戦を控えた9月9日も、いつものように切磋琢磨するGK陣の姿があった。
ダッシュ、ポールやダミー人形を使ったステップワーク、戸田光洋コーチの下でのパス&コントロールと練習を続けるフィールドプレーヤーと離れて、GK陣だけで練習に没頭。高橋範夫GKコーチ指導の下、笠原、志村、加藤、坪井湧也の4人が大きなボールやコーンも使いながら、ステップやジャンプを入れて飛ぶなど、様々なキャッチングに汗を流した。
フィールドプレーヤーと合流してからは、GKを含めて9対9のゲームを実施。1人3分を2本。GKだけにワンタッチの制限を課し、長澤徹監督が「30分じゃないよ、3分だよ。全部出し切ってるか!」と檄を飛ばすなか、約70分の短くも密度の濃い練習を切り上げた。
「試合に出られない悔しさはありますけど、僕は練習自体が楽しいんです。もちろん勝負事だし、プロの世界は厳しいけど、好きでサッカーを始めて、小さいころからずっと楽しみながらやってきたので、プロになっても楽しむ気持ちを忘れちゃダメだと思うんです。例えば練習中、GKにしか分からない細かいこと、プレーに関するマニアックなことを話し合ったりする瞬間が、すごく楽しいんです」
そんな志村の明るさが、チームの支えとなっている。
「どんなときも明るさで乗り越えていこうと思うんです。その場の空気を和らげたり、チームの雰囲気を良くしたりすることが、自分に起こせる変化なのかなって。そのへんは一応考えています(笑)」

西大宮の練習グラウンドでは、今日も一枠を巡る熾烈なバトルが繰り広げられている。だが、そこには同時に志村の笑顔もある。
(文:粕川 哲男/写真:高須 力)
プロ11年目の29歳。市立船橋高校を卒業後、磐田、水戸、FC東京、北九州でキャリアを積み上げ、大宮在籍は4年目になる。好きな言葉は「一日百笑」。積極的に笑うことでストレスをなくし、前向きな気持ちになり、周囲との関係も良くなるという意味の四字熟語を地で行く、笑顔が似合う男だ。

明るいキャラクターについては、大宮加入直後に「子どものころからふざけたり、人を笑わせたりするのが好きでした。高校1年生のときに先輩の前で一発芸をやって、そのときはクスッて感じだったんですけど、そこでキャラが決まりましたね」と、自身の起源を教えてくれた。
試合後にファン・サポーターと勝利の喜びを分かち合う、恒例の「寝ても大宮」では、これまで何度も歓喜のダンスを披露してきた。J3優勝を遂げた昨季の第33節・今治戦後のセレモニーでは、シャーレを3度掲げ、3度とも仲間の反応がなくてずっこけるという、お約束のパフォーマンスで笑いを誘った。「3回は、ちょっと多かったですよね。でも、やれって言うから」

チームのみんなから愛されるムードメーカーだ。 とはいえ、サッカー選手としてのここ数年の歩みは、決して満足いくものではない。
北九州から期限付き移籍で大宮に加入した2022年は、リーグ戦26試合に出場した。第15節の岩手戦、南雄太の負傷退場を受けて急遽ピッチに立って以降、霜田正浩監督、バトンを継いだ相馬直樹監督からも信頼されて、最終節まで出場。勝点を伸ばせず、最終的に19位でシーズンを終えた1年で、7つの勝利と4つのクリーンシートに貢献した。
しかし、2022年の記録がキャリアハイだ。翌年は原崎政人体制で迎えた終盤の6試合に出場し、徳島、大分、山口、藤枝相手の4連勝を支えるなどしたが、J3降格を止められなかった。
そしてここ2年は、フルタイム出場を続ける笠原の牙城を崩せていない。

振り返れば、プロサッカー人生は試練の連続だった。
プロ1年目の磐田ではカミンスキーが不動の地位を確立しており、八田直樹もいた。2018年、育成型期限付き移籍で1年間在籍した水戸には本間幸司や松井謙弥、2020年のFC東京には林彰洋や波多野豪、2021、2022年の北九州には吉丸絢梓、田中悠也、さらには現在も大宮で鎬を削る加藤有輝などがおり、レギュラーを巡る争いは、どのチームでも熾烈だった。
そもそもGKは、たった一つのポジションを奪い合う過酷な環境におり、出場へつながる門はフィールドプレーヤーのそれよりもはるかに狭い。試合中の交代もアクシデントによるものがほとんどで、リードを守るためや流れを変えるための途中出場は、めったにない。
「GKがフィールドよりも枠が少ない特殊なポジションだっていうことは、十分わかってます。だけど、自分にできること、やるべきことは変わらないんですよ。大事なのは目の前の練習を全力でやることだし、やり続ければチャンスが来たりする。それを見越していつでも準備しているので、2年前は終盤にポンと出番が回ってきたときに結果を残すことができました。自分ではそういった状況に強いと思ってるので、試合に出るチャンスが来たときは、勝ちます!」

第29節の長崎戦を控えた9月9日も、いつものように切磋琢磨するGK陣の姿があった。
ダッシュ、ポールやダミー人形を使ったステップワーク、戸田光洋コーチの下でのパス&コントロールと練習を続けるフィールドプレーヤーと離れて、GK陣だけで練習に没頭。高橋範夫GKコーチ指導の下、笠原、志村、加藤、坪井湧也の4人が大きなボールやコーンも使いながら、ステップやジャンプを入れて飛ぶなど、様々なキャッチングに汗を流した。
フィールドプレーヤーと合流してからは、GKを含めて9対9のゲームを実施。1人3分を2本。GKだけにワンタッチの制限を課し、長澤徹監督が「30分じゃないよ、3分だよ。全部出し切ってるか!」と檄を飛ばすなか、約70分の短くも密度の濃い練習を切り上げた。

「試合に出られない悔しさはありますけど、僕は練習自体が楽しいんです。もちろん勝負事だし、プロの世界は厳しいけど、好きでサッカーを始めて、小さいころからずっと楽しみながらやってきたので、プロになっても楽しむ気持ちを忘れちゃダメだと思うんです。例えば練習中、GKにしか分からない細かいこと、プレーに関するマニアックなことを話し合ったりする瞬間が、すごく楽しいんです」
そんな志村の明るさが、チームの支えとなっている。
「どんなときも明るさで乗り越えていこうと思うんです。その場の空気を和らげたり、チームの雰囲気を良くしたりすることが、自分に起こせる変化なのかなって。そのへんは一応考えています(笑)」

西大宮の練習グラウンドでは、今日も一枠を巡る熾烈なバトルが繰り広げられている。だが、そこには同時に志村の笑顔もある。
(文:粕川 哲男/写真:高須 力)
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