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どんな逆境も跳ね返す勇気が、全身から湧き上がる男になれ。
両親が名前に込めた思いを、坪井湧也は日々体現している。黙々と、懸命に、それでいて明るく、トレーニングに励む。笠原昂史、加藤有輝、志村滉と坪井の4人で構成されるGKチームは、チームトレーニングの前半は高橋範夫GKコーチの下でキャッチングやセービングなどのGKの技術向上に取り組む。その後はフィールドプレーヤーとともに、戦術的なメニューを消化する。今週公開された練習で、坪井は至近距離からのシュートに鋭く反応し、スタッフとチームメートから拍手を浴びた。
全体練習終了後も、アタッカー陣のシュートを受ける。いったいこの日は、何本のシュートをキャッチし、セーブしたのだろう。一本、一本のシュートに気持ちを込めて向き合う精神力は、この男の「強さ」と言えるはずだ。
──期限付き移籍で加入した今シーズンは、ここまで公式戦のメンバーに入ることができていません。坪井選手にとっては、どんなシーズンとなっていますか?
「試合に絡めていないということで、シーズン前に自分が思い描いていたようなものではありません。けれども、チームはここまでJ1昇格が狙える位置につけていますし、チームのみんながJ1昇格をつかもうという強い気持ちを持っていて、それがチーム全体の雰囲気になっている。その中で僕も、やっぱりチームの力になりたいという思いはすごく強い。いざ試合に出た時に、巡ってきたチャンスを生かせるように、というのはいつも心がけています」
──大宮には4人のGKがいて、試合に絡めるのはそのうち2人です。その現実を理解して、日々全力で試合に取り組む。これは決して、簡単なことではありません。
「サッカー選手は試合に出て評価される部分がやはり大きいので、自分にとって難しい時期だとは思います。それでもやっぱり、ここで何かきっかけをつかめるようにするというのも、サッカー選手の仕事の一つかなと思うんです。自分に対する不甲斐なさとか悔しい思いはすごくありますけれど、それも含めて仕事であり、好きなサッカーなので、そこだけはブレないように。どんな状況になっても、チームと自分の両方のために、100パーセントでやり続けるというのは心がけています」
──これまで所属してきたヴィッセル神戸とジュビロ磐田では、W杯に出場した川島永嗣選手、日本代表に選ばれたことのある前川黛也選手、あるいは長くキャリアを構築している飯倉大樹選手らがチームメートでした。そうした選手たちを見て、取り入れてきたものはありますか?
「これまでかかわらせてもらってきた選手の方々は、もう本当にピッチの内外でプロフェッショナルです。J1の選手にはキラキラしたイメージがあるかもしれませんが、体のケアには気を遣っていますし、食事にもこだわっています。そういうのはすごく勉強になったというか、自分も取り入れないといけないと感じました。川島選手は40歳を超えていますけれど、だからこそ第一線でプレーし続けられるんだろうなと思います」
──そういうお話を聞いていると、やはり公式戦に出て自分の成長を確かめたいでしょうし、こちらも坪井選手のプレーを観たくなります。
「それは僕も一番強いですね。『練習は試合のように、試合は練習のように』と言いますけれど、ピッチ上でかかるプレッシャーであったり、そのときの雰囲気だったりっていうのは、公式戦でしか感じられない部分が絶対にあるので。やっぱりそこに出て、自分の成長とか課題といったものを確かめたい、っていう気持ちは強いですね」
──GKチームは、お互いをリスペクトしながら切磋琢磨できていますか?雰囲気はどうでしょう?
「雰囲気はいいですよ。何て言うか、同じポジションを争うライバルではありますけど、トレーニングではもうずっと一緒なので、やっぱりお互いに成長していかなきゃいけない。お互いの存在がいい刺激になっていますし、いい雰囲気でできていると思います」
──一緒に成長していく仲間であり、ライバルでもある。どこのチームでもあることですが、その関係性はなかなか難しいのでは。
「そうですね。おっしゃるとおりで、ホントにこれはもうどこのチームでもあることで。大事なのは、あまり他の選手を意識し過ぎず、自分の成長に目を向けることだと思います。他のGKのいいところも真似していかなきゃいけないですけれど、やっぱり軸は自分、ベクトルは自分に向けて取り組んでいくことが大事かなと、自分なりには思っています」
──宮沢監督が就任しました。チームの変化については?
「3連敗のあとの2連勝ということで、雰囲気は変わりました。宮沢監督も(長澤)徹さんの思いを汲みながらチームを作っていく、という話をされていました。みんなそこは、どちらの監督にもリスペクトを持って取り組めているので、いい雰囲気なのかなと思います」
──ところで、坪井選手は自身初のJ2ですが、J1との違いを感じるところはあります?
「いまはもう、J2の上位もJ1で戦っていける力があるというか、J2のレベルも高くなっていますし」
──そこはもう、大きな違いはない、と?
「そうですね。そんなに。実はJ2は大宮しか来たことがないので、他のチームへ行ったらまた印象は違うのかもしれないですけれど」
──ちなみに、お名前が素敵ですね。「ゆうや」という名前では、あまり多くない漢字ですが、お名前の由来を教えていただけますか?
「3兄弟で、全員最後に『也』がついていて。僕の『湧』は水が湧き出るという意味なんですけれど、『勇気が湧き出るように」という意味を込めてつけてくれたと聞きましたけど」
──なるほど、それは益々素敵ですね。
「ありがとうございます。親も喜びます(笑)。小学校のときに由来を聞いたんですけど、そこから自分でもいい名前だな、と」
──ちなみに、もう一つ。背番号を「45」にした理由はあるのでしょうか?
「背番号は、特に理由はなくて。着けたことのある番号が空いていたので。プロでは着けてないですけれど、1回着けたことがあったので。(ヴィッセル神戸の)ユースで着けた記憶があって、馴染みのある番号だったので選びました」
──ありがとうございました。公式戦でプレーする坪井選手を観るのを、楽しみにしています。
「ありがとうございます」

(文:戸塚 啓/写真:高須 力、早草 紀子)
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