NEWS

ニュース

【トレーニングレポート】濱田水輝の言葉も胸に、イヨハ理ヘンリーは最後の戦いで「自分の価値を証明する」

濱田水輝の言葉が、イヨハ理ヘンリーの胸に響いた。

今季、ケガに泣いた2人は、リハビリ期間を一緒に過ごしてきた。濱田は左膝蓋骨骨折、イヨハは右大腿直筋肉離れ。10月、西大宮の練習グラウンドには仲間たちと離れ、復帰へ向けて黙々と走る2人の姿があった。



イヨハの心を動かした濱田の言葉は、第35節・秋田戦前の円陣でのものだ。宮沢悠生監督の就任から3連勝を飾り、山形相手になんとか勝点1を得て迎えた負けられない一戦。その直前、35歳の濱田が思いの丈を口にした。

「僕が伝えたのは、この試合に出られること、満員のスタジアムで戦えること、昇格争いの緊張感のなかでプレーできることは、当たり前じゃないってこと。ピッチを離れている僕が思うところを伝えさせてもらいました」

そんな濱田の思いは、確実に届いた。秋田戦で7試合ぶりにケガから復帰したイヨハは、左SBで途中出場して攻守に躍動。カプリーニのCKからゴールを奪い、体を張り続けて5-0の快勝に一役買った。

「どんな試合も楽しむと決めていて、秋田戦も楽しむことに集中していたんですけど、その気持ちに辿り着けた要因として、試合前の(濱田)水輝くんの言葉があったと思います。水輝くんの思いを自分が背負うというのはおこがましいですが、少しは結果として見せることができたので、よかったです」



今年6月、広島から大宮への移籍を決めたイヨハは、自身5度目の戦いに挑んでいる。

最初の武者修行は2018年、19歳のとき。アカデミー時代から所属する広島を離れて、初の移籍先である岐阜で多くの経験を積んだ。その後、2021年に鹿児島、2022年に熊本、2023年に京都へ移籍し、J3からJ1まで3つのカテゴリーでプレーした。そして、5度目の期限付き移籍で大宮の一員となったわけだ。

ところが、先発に定着しつつあった第28節・札幌戦で右足を痛めてしまう。最終ラインは緊急事態に陥った。キャプテンのガブリエウは負傷離脱中で、市原吏音もU-20日本代表でチームを離れる。「J1昇格、J2優勝を掴み取りたい」一心で大宮への移籍を決断したのにチームの力になれない。そんな現実に歯痒さを感じた。

それでも、焦ることはなかった。4年前に鹿児島で同じケガをした際は「全治10週間」の見込みだったが、実際は半年間、実戦から離れることになった。あの経験があったから、慎重になった。



「自分が大宮に来た意味は分かっています。中心選手としてチームの輪の中にいられない、役割をまっとうできてない感覚もありました。ただ、自分にできることをやろうと気持ちを切り替えたんです。あとは信じるだけ。みんなを信じてました」

別メニューで練習を続けるなか、長澤前監督が去り、宮沢監督が就任した。電撃と言える変化に驚いたが、前向きな姿勢は変わらなかった。

「最初の挨拶で宮沢監督がいろいろなものを背負って来ていると分かったし、覚悟とか姿勢を感じることもできたので、その思いに応えなきゃって。自分たちの目指すところ、勝ち取るものは何も変わらないので、このまま進んでいこうと思いました」

連敗を止め、無敗を守る仲間たちがいたから、強い気持ちで復帰を目指せた。

「宮沢監督がやろうとしているサッカーを、みんながピッチ上で表現できているおかげで勝点を積んでこられた。自分もやらないと、と思っています。ファン・サポーターの皆さんも同じように感じていると思うんですが、監督、選手、スタッフ全員の試合に懸ける思いがすごくて、チームがさらに強くなったと感じています」



首位を走る水戸との決戦を控えた練習に、秋田戦での快勝の余韻はなかった。イヨハも強度の高いメニューに励み、「昇格を争う状況で、水戸のような素晴らしい相手と戦える機会はキャリアのなかでもそうない。ピッチに立てる喜びを噛み締めながら、自分たちの良さを出すために良い準備をしたい」と口にした。

リーグ戦は残り3試合。最終盤でピッチに帰ってきたイヨハは、ケガを乗り越えた自分自身に期待を寄せている。

熊本時代の2022年、リーグ4位でJ1参入プレーオフに進み、大分、山形と引き分けて決定戦まで進んだ。しかし、J116位だった京都にも1-1で引き分けてJ1昇格を逃した。山形、京都相手に自ら2試合連続得点を決めながらも目標に届かなかった。あの悔しさも、自らを突き動かすエネルギーになっている。



「結果をもたらす。目標達成の原動力になる。そんな思いで大宮に来たので、これからが1番楽しくて、自分の価値を証明するいい期間になってくると思います。こういう状況でサッカーをプレーできる機会は多くない。大宮の仲間と昇格を勝ち取れるチャンスなので、狙うのはそこだけ。どんなにつらいことがあっても、昇格さえ達成できれば大満足です」

過去4度の期限付き移籍を上回る輝きを放つため、そして信頼できる仲間、尊敬できる先輩とともに目標を達成するため、イヨハは自身のすべてを懸けて最後の戦いに挑む。




(文:粕川 哲男/写真:高須 力、早草 紀子)

  • チーム

FOLLOW US

アーカイブ