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J1昇格のラスト1枠を巡るバトルへ向けて、チームは12月3日の練習から動き出した。トレーニング前には前日に25歳の誕生日を迎えた泉柊椰へ、スタッフと選手が祝福の歌を贈った。ピッチ上で誰よりも大きな声を響かせたのは、オリオラ・サンデーだった。
その後の練習でも、サンデーは目を引いた。左右両足で豪快なシュートを何本も突き刺し、サイドに流れればGKとディフェンスラインのあいだへ鋭くクロスを供給した。宮沢悠生監督の就任とともに8試合連続でスタメン起用されてきた背番号90は、好調を維持して大一番を迎えようとしている。
4日後に迫ったJ1昇格プレーオフ準決勝について問われると、「緊張感はないです、楽しみです」と切り出した。「自分のサッカー人生の中で、こういうプレーオフは初めて。楽しみしかないですし、チームが勝つために頑張ります」
宮沢監督は就任直後から「目の前の1試合に集中する」と話し、「毎試合が決勝戦」とのメンタリティをチームに植え付けてきた。サンデーも「そう、毎試合が決勝戦というスタンスでやってきました」と頷き、「今回はもうホントに決勝戦が来たという感じですね」と表情を引き締めた。
チームは第37節の徳島戦、最終節の山口戦で連敗を喫した。振り返れば、宮沢監督の下で初めて戦った磐田戦も、札幌、長崎、今治に3連敗した直後のゲームだった。その磐田戦では、0対2から4点を連取して4対3で競り勝った。鮮やかなリバウンドメンタリティはその後も持続され、6戦負けなしを記録したのだった。
「磐田戦の前とちょっと似ているけど、今度は自分たちが先に点を取る。(同点では勝ち上がれないので)自分たちが点を取らないといけないから、相手より先にできるだけ点を取る。どうやって守るのかも、自分たちは分かっている。山口戦みたいな感じにならないように、みんなでピッチの中でたくさん喋って、できることをたくさんやって、勝つために戦います」
千葉とは5月6日のアウェイゲームで2対1の勝利を収め、8月9日のホームゲームは0対1で落とした。2度の対戦を踏まえて、サンデーは「両方のチームとも、たぶんやり方は分かっていると思う」との前提に立つ。
「今日の練習前に千葉の映像を観て、これができれば自分たちのスタイルが出せるというのが整理できた。自分たちは勝つ自信があるし、自信を持つだけじゃなくてハードワークもする。自分も攻撃だけじゃなくて、守備をするときはしっかり後ろに下がって、チームのために守備でもハードワークする。攻撃では背後を狙うだけじゃなくて、キープをするところではちゃんとボールを収める。チームが勝つために、たくさん走ります」
リーグ戦38試合で6ゴールを記録した。シーズン初得点は第6節の水戸戦で、第19節の長崎戦で2ゴールを記録した。前述の磐田戦でも逆転勝利につながる2得点をあげ、第37節の徳島戦では鮮やかな右足ボレーを突き刺した。
そう、サンデーが得点を奪ったのはJ1自動昇格の水戸と長崎、4位の徳島、5位の磐田なのである。リーグ戦で唯一仕留められなかったのが、今回のプレーオフで激突する3位の千葉なのだ。
「そうです、それは一番自分が楽しみ。順位が下のチームから点を取るのも全然いいんですけど、上のチームから取ったらもう全然話が変わりますし、自分は日本で、トップレベルでサッカーがしたい。そのためには、トップレベルのチームから点を取らなあかんし。もちろん順位が下のチームからも点を取らなあかんけど、上のチームから取ったらもっと楽しい。その楽しみへ向かって、プレーしている。できることはちゃんとやって、点を取って、自分もこのチームの歴史に名前を刻みたいです」
RB大宮アルディージャというクラブにとって、今回のJ1昇格プレーオフ準決勝は大きな意味を持つ。同時に、22歳のサンデーにとっても、今後のキャリアを左右する一戦となるかもしれない。
「将来的に、自分にもし子どもが産まれたら、子どもたちに初めてプレーオフを戦ってしっかりJ1に昇格できたって、動画とかを見せたい。それを考えたら走れる。背後を何度でも取る。自分が持っているものを全部出し切って、いい2025年だったと言えるようにします。いい形でシーズンを締めくくりたいと思います」
アウェイのスタジアムで、RB大宮のファン・サポーターに割り当てられるチケットは残念ながら少ない。それでも、相手に負けない熱量を、ピッチに注いでくれることはずだ。NACK5スタジアム大宮では、パブリックビューイングが開催される。配信を観ながら声援を送ってくれる人もいるだろう。
RB大宮の勝利を願うすべての人のために、サンデーはピッチに立つ。期せずして訪れた千葉との3度目の対戦──上位キラーの立場をコンプリートするための『アディショナルタイム』に挑む。
フクアリが静まり返る一撃を、相手ゴールへ見舞う。「そうです。頑張ります」
めぐってくるチャンスに、ほとばしる思いを注ぎ込む。
(文:戸塚 啓/写真:高須 力)
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