NEWS
ニュース
「皆さん、こんにちは。本日はお忙しいところ急遽集まっていただきありがとうございます。まず最初に長澤徹前監督へのお礼を述べさせてもらいたいと思います。
一昨年チームがJ3に降格して、一番大変な時期に監督に就任していただきました。そして昨季、J3でトップとなりJ2に昇格、今年も非常にいいスタートを切った。そのチームのベースというか、非常に混乱していたチームをしっかりまとめてくれて、ここまで持ってきてくれたことに感謝しています。
本当に感謝しかありませんし、今回の決断は決して簡単ではなかったです。彼の指導力、あるいは選手、コーチ陣との関係性を考えたときに、いろいろな判断もあったのですが、ここ14試合で3勝しかできていなかったこと、そして大事な時期に3連敗してしまったことで、何かを変えなきゃいけませんでした。そのため、クラブとしても簡単ではない決断をすることになりました。
それで磐田戦前に、宮沢悠生監督が就任して、選手たち、コーチ陣と一緒になって勝利してくれました。この勢いを続けていければと思います。
スチュアート・ウェーバーは、プレミアリーグを中心に多くのチームでの経験が豊富なダイレクターです。今回ヘッドオブスポーツということで、スポーツ部門の責任者として来てもらいました。来て早々、積極的にいろいろなところで動いてもらって、今後、皆さんともお会いすることが多いと思いますので、よろしくお願いします」
「皆さん、こんにちは。私はイギリスのウェールズ出身です。この業界で仕事をして20年ほど経ちます。最初にコーチとして経験を積んで、その後にリバプールやQPR、ウォルバーハンプトンなどで仕事をして、ノリッジ・シティFCで7年ほどスポーツダイレクターを務めました。日本という国、RB大宮アルディージャに来ることができて、とてもうれしく思っています。RBグループの一員として、このプロジェクトに貢献できることを楽しみにしています」
――大宮の印象、RBグループから求められていることは?
「第一印象は、とても良いと感じています。私は、やはり人がすべてだと思っています。環境も含めて、RB大宮アルディージャのトップチーム、女子チーム、アカデミーで、本当にすばらしい人たちが仕事をされていると感じています。ここから先、私もこのグループの一員として仕事をしていくことを、とても楽しみにしています。このクラブに来る前に、ユルゲン・クロップやマリオ・ゴメスと話をしてきました。彼らの、このプロジェクトに対する情熱は、ものすごいものです。プロジェクトを進めるにあたって、自分たちはこうやってくんだという明確な意思を感じました。その一つに、若い選手たちに機会を与えて、成長させていくことです。将来的にはヨーロッパでプレーできるような環境を与えていくことを、はっきり口にしていました。もちろん、日本という国にはすばらしいタレント、将来性のある若手がたくさんいると思います。彼らの成長を助けて、ヨーロッパに送り出すことができれば、誇りに感じられると思います。また、1993年にJリーグが誕生してから、ここまですばらしい発展を遂げてきたと思います。そこからさらに成長していく一助、手助けができればと思っています」
――残り数試合での就任ですが、短期間で成し遂げられることは?
「個人のレベルで何ができるかと言えば、このクラブにいる人たちのことを知ることがあります。もっとよく知ること、それが一番だと思います。すでに新しい監督、新しいコーチも来ていますが、彼らの下で残りの試合で良い結果を出せるように、できる限りのサポートをするのは当たり前です。だからといって、自分がピッチ上のパフォーマンスに何かをもたらせるかと言われたら、それは簡単なことではないということも分かっています。ただ、その中でも自分にできることはあるので、まずは知るということ。いろいろ見て、覚えて、彼らのことを最大限にサポートしていければと思っています」
――アカデミーの改善点は?
「育成は、自分が最も大きな情熱を注ぐ分野の一つです。これまでにも育成に携わってきましたし、これまでに自分が見てきた成功したチーム、例えばアヤックス、リバプール、マンチェスター・ユナイテッドなどが調子の良いときというのは、下部組織から出てきた選手たちが活躍しています。ボトムアップ型と言われるシステムがうまくいっているとき、良い結果を残せると私は考えています。
自分たちも中長期的なプランを考えたときに、トップチームが良い成績を残すためには、アカデミーにおける育成の成功がなければいけません。実際、FIFA U-20ワールドカップチリ2025では、アカデミーから育った市原吏音がU-20日本代表のキャプテンとして活躍している姿を見ています。RB大宮アルディージャはすでにすばらしい仕事をしているわけですが、そこにレッドブルが信条としている、勇敢にリスクを冒すというポリシーを強調して、アカデミーのさらなる発展を促したいと思います」
――宮沢悠生監督はJリーグで初めての指揮になります。抜擢理由と期待は?
「どんな監督であっても、トップチームを初めて指揮することはあると思います。我々のビッグリーダーと言えるユルゲン・クロップも、初めてトップチームを指揮した試合があったはずです。そのときは、もしかしたら周りからは疑問の目を向けられていたかもしれません。ただ、自分たちがレッドブルグループのチームとして残り少ない試合を戦う際、どういう形でプレーしたいのかと言えば、アグレッシブに前へ行きたい、前進したい、チームを前に進めたいといった思いがあります。そんな中選手とのコミュニケーションを考えると、やはり日本語を話せる人物がいいだろう。そのふたつをおさえた人物として、宮沢悠生監督に決定したわけです。磐田戦は準備期間が短かったですが、仙台戦は1週間準備をした状態で臨めるので、良い結果を残して前へ進めると考えています」
――RB大宮アルディージャは、他のレッドブルのチームと比べて平均年齢が高い現状があると思います。もっと若返りを図りたいのか、宮沢監督に若い選手の起用を求めるのか?
「おっしゃるとおりで、他のレッドブルのチームに比べたら自分たちの平均年齢は高いと思っています。ただ、それは日本の大学サッカーのシステムとの兼ね合いもあると考えています。若いタレントを供給するというテーマを考えると、アカデミーの選手を重用したい思いはありますが、宮沢監督にこの選手を使えとかの指示を出すことは違うと思います。そんなことをしたら、監督がいる意味がなくなると思います。今後メンバーをどう構成するかを考えたとき、例えばセンターバックが6人いたとしたら、その人数を4人に絞って、そのうち1人を若い選手にすれば、プレー時間をある程度確保できると思います。若い選手を育て、世界に供給するということを考えれば、将来的には平均年齢が若いチームになるのではと思っています。そうした若返りを図りながらも、もちろん結果も出していかないといけないので、自分はその両方を達成できると信じています」
――実際にチームを見て感じるポテンシャルは?
「このクラブに来て少ししか時間は経っていませんけど、チームの団結力、スタッフや選手たちの情熱、与えられた環境の中で、一生懸命に取り組んでいる姿を見ています。もちろん、すばらしいタレントを持った選手がいることも分かりました。若い選手から経験ある選手までバランスも良く、まだまだ上位に食い込める可能性があると思っています。ここまでに彼らが成し遂げてきたことの価値も理解しています。ただ限界はないと思うので、さらに上に行けると信じています」
――イギリスを出て日本の2部のクラブを選んだ理由、どこにやりがいと魅力を感じたのか?
「確かに、自分にとって大きな決断でした。ただ先日、選手たちに『勇敢に挑戦しよう』と話しました。あるいは、それは自分の決断を思い返しての発言だったかもしれません。自分はノリッジ・シティFCで多くのことを成し遂げたと思っています。そこから離れて次の仕事を考えたとき、イギリスではない国が思い浮かびました。海外の可能性を考えていたときにマリオ・ゴメスから話を聞いて、プロジェクトに対する期待と情熱が伝わってきましたし、ユルゲン・クロップとの話を通して魅力も感じました。日本のサッカーが成長していること、良い選手がたくさんいることも知っています。私は、サッカーが大好きで、見ることも大好きです。この国には、自分が魅力的に感じることが溢れていると思ったので、今回の決断に至りました。もちろん大きな決断でしたが、実際にこのクラブに来て、原さんやスタッフと話をする中で、大きな決断ではありましたけど難しくないとも感じました。(クラブの)皆さんが、私をとても温かく迎え入れてくれて、チームの一員であると感じることができました。そこで自分の決断は間違っていなかったと感じました。皆さんはウェールズから来たクレイジーな男と思うかもしれませんが、自分はこのチームの一員としてやっていけると実感しています」
――今後のアカデミーの改革として、日本全国から選手を集めるような考えは?
「まずは、大宮周辺に住んでいる選手たちを見るべきだと思っています。さらに、少しずつスカウトネットワークを広げていければとも考えています。そのためにはスカウトを充実させる必要がありますし、より施設面を充実させる必要性も感じているので、一歩一歩進んでいければと思います。そうした改革を進めていくうえで、昨日もスタッフとミーティングをしたのですが、強調したことは、『勇敢であること』『挑戦していくこと』です。そこを皆さんに要求しました。そうしてもらえれば、もしうまくいかないことがあったとしても、自分が責任を取って皆さんを守ります。正しい意識をもって決断したことに関しては応援できるので、野心的にどんどん進めていければと思います」
――埼玉ダービーへの興味は?
「サッカーというスポーツは、どんな人にも開かれたものでなくてはならないと思っています。もう一つ、ライバル意識の重要性も分かっています。自分はフットボールファンですし、そこにライバル意識があるとより面白さが増すとも思っています。彼ら(浦和レッズ)にすばらしい歴史があり、たくさんの功績を残してきたことも知っていますが、『これからはそう簡単にはいかせないよ』というところを、このクラブで少しでも見せていければと思います。そのためにも、早く彼らと同じステージに立てればと思います」
「監督に就任しました宮沢悠生と申します。RB大宮アルディージャにコミットメントして、リーグ戦は残りわずかですけど、精一杯全力で指揮をさせていただければと思います。よろしくお願いします」
――監督就任の打診はいつで、どこに魅力を感じて決断したのか?
「もう本当に直近の話だったので私もびっくりしました。詳しくはスチュアートに聞いていただいたほうがいいと思いますが、私はザルツブルクで働いていましたので、自分の良さを出せると思い、そこに魅力を感じてオファーを受けさせていただきました」
――指導するうえで大切にしていること、哲学は?
「人がするスポーツ、特にサッカーは足でやるスポーツなので、ミスが起きやすいスポーツだと自分は思っています。ただ、ミスを恐れてサッカーをプレーするのではなくて、ミスが起きたときにどういった立ち居振る舞いをするのか。ミスを恐れずにプレーできる環境を、指導者として戦術や声掛けで作っていきたいと感じています。戦術に関しては話せば何時間にもなってしまうので省略しますが、そういったところが、私が目指すサッカーの大きなところにかかわっていると思っています」
――日本でもゲーゲンプレスが認知されたように、Laufwege (ラオフヴェーゲ=戦術的な意図をもった動き全般のこと)のような概念を伝えていきたいのか、それよりも目の前の結果なのか?
「まずは、コーチングスタッフが選手たちと築き上げてきたことがあります。そういう部分では、スタッフとコミュニケーションを取りながら、この単語は分かるかなと探りながらやっているところです。なぜなら、私にはリーグ戦の7試合とプレーオフの2試合しか期間がないので、私がしたいことではなくて、選手が理解できることをピックアップしながらやっています。ただ、ゲーゲンプレスとかの本当に大きなこと、自分がどうしても曲げられないものは選手たちに分かってもらって、それ以外のところは、私が日本語を勉強している感じでやっています」
――南野拓実選手、奥川雅也選手、大迫勇也選手、長澤和輝選手の通訳として、身近でトップ選手を見てこられた経験を、どうRB大宮アルディージャの選手たちに伝えていくか?
「いま名前を挙げていただいた4人と、いま大宮にいる選手の環境や状況はまったく違います。比較するのは難しいですけど、4人の選手たちは本当にプロフェッショナルで、年上の私でも尊敬する部分がたくさんありました。そういったプロフェッショナルのところで伝えたいことはあります。例えば自主練習という文化、どういうふうに自主練習をしていたか、試合に対してのメンタルの持って行き方は、すごく学べるところがあると思いますので、もし選手が僕に聞きに来たら、時間を作ってでも伝えてあげたいと思っています。もちろん(杉本)健勇などは(南野)拓実と仲が良いので、私のほうから声掛けもしています」
――「狩る」をキーワードにした意図は?
「狩りに行くという言葉を選んだのは、守備をするとか攻撃をするではなくて、ボールを奪いに行くとか、ゴールを狙いに行くというところ。概念としては間違っているかもしれないですが、守っているけど受動的にならず、アクティブに行くイメージをどうやって伝えるかと思ったとき、『狩りに行く』という言葉がすごいしっくりきたので、これで行こうと思いました。あとは、後ろの人数を多くすれば失点が減るとか、前から行けば失点が減るとは全然思っていないので、どういったサッカーをしたいか、何が俺たちのサッカーなのかを選手たちに伝えるために、そういう言葉を選択しました。それは、やはりファン・サポーターを楽しませたいからです。もちろんプロの世界なので勝点は必要だと思いますが、ファン・サポーターのためにサッカーをするというのは私がS級ライセンスを取ったときに感じたことなので、ワクワクするようなサッカーとは何かをヨーロッパで突き詰めて、自分の哲学とまではまだいかないですけど、その基礎になる土台みたいなものは自分の中にあります」
――選手と向き合ううえで大切にしていること、ご自身の性格、磐田戦後のスピーチに込めた思いは?
「まずは、スピーチで何を話したのかはあまり覚えていなくて。自分が本気で思っていたことをその場で伝えようと思って発した言葉でした。あと、SNSは見ていません。どういう反応があったのかは分からないですけど、性格的には全然クールではありません。選手もスタッフも、そろそろ気づいていると思います。ただ、自分はどういう人間かというと、仲間を大事にしています。あとは見えない無形の力みたいなものを大事にしたいとも思っています。それは、野村克也監督の本にあった言葉です。選手は若い選手、ベテランでいろいろ状況があると思うので、人間として向き合うこと。とはいえ、最後は自分が決断して決めなければいけないときは、情は捨てて決断することが私の仕事だと思っています」
――1週間指導してこられて、選手たちのリアクションやパフォーマンスについて感じることは?
「とにかく真面目で、ひたむきに取り組んでくれる集団だと思います。就任1日目の練習で感じたことで、それは確実に長澤前監督が作られたすごいベースがあってのことだと思っています。その中で、新しいことにチャレンジする。(中盤を)ダイヤモンド型にするのは、みんな、たぶん小学校ぐらいからやってないよねと話していましたけど、そういう新しいことにチャレンジしています。そこで、今やっていることが楽しいと言ってくれる選手が何人かいて、それはこれまでやってきたサッカーと少し違うことなのかもしれないですけれども、それによって選手たちがちょっとうまくなれるとか、ちょっと新しいことがあるという気づきが少しずつ出てきて、選手たちのやってやるぞというポジティブなエネルギーになると、もう私がやることの半分以上はできているので、あとは選手たちが勇気を持ってプレーする。それでミスしたときのオーガナイズ、前の試合で出た課題、対戦相手のウィークポイントなどを見ながら修正して、選手たちが躍動するのをライン際でサポートするのが私の役目だと思っています」
――就任を決断するまでの率直な思いは?
「最初にお話をいただいたときには、準備不足かなという思いがありました。そこからマリオ・ゴメスとか、ユルゲン・クロップに『大きなチャンスが巡ってくるときは、絶対に自分が準備できていると思う以上のものがくる。ただ、その準備ができていない者には、そういうチャンスは来ない』と言ってもらえたので、すごく腑に落ちました。それでぐっすり寝られました。日が経つにつれて、妻からは『やってみたら』と言われました。子供3人は大反対だったのですが、妻が後押ししてくれました。あとは、所属していたFCリーフェリングのスタッフとか上司がかなり背中を押してくれて、『心配しなくていいから行ってこい。俺らの代表としてやってこい』といった言葉もあったので、承諾するときはかなりすっきりしていました。そこからは不安はありませんでした」
――埼玉県の印象は?
「大宮は最高ですね。自分の中ではすごい馴染んでると思います。私は関西出身なので、こっちのほうはあまりよく分からないのですけど、この前のオフは散歩をして、良い街だなという印象を持ちました。あとはホームスタジアムがすごく良い雰囲気と聞いているので、すごく楽しみにしています」
――J2リーグの印象は?
「ドイツとかスペインのように強いチームが抜けているという印象はまったくありません。やはり各チームが、どこのチームからも勝点が取れる、逆に勝点を落としてしまうリーグだと思います。レベルはすごい上がってきていると感じます。だから勝点とか順位に一喜一憂すると、かなり難しくなる。それは私が最初に順位表を見て感じたことなので、選手たちには表現として『狩りに行く』という言葉がしっくりきて、そういう意識で選手たちと一緒に戦って、最後にどこにいるか。選手たちと共有したのは、やはり自分たちは昇格組で、この位置にいるのはすごいこと。『足るを知る』じゃないですけど、ビッグチャンスだと喜んでいいと思います。ケガ人が出てチャンスをもらっている若い選手たちは、おそらく自分がなんとかしなければいけないという責任感があると思いますけど、それよりも試合に出られること、成長できる状況を素直に感じてほしいと思います」
- チーム